「電子帳簿保存法」とは、税務関係の帳簿書類を電子データとして保存することができるようにする法律です。この法律を利用することで、経理業務のデジタル化が可能となります。
さらに、「電子取引」に関する書類に含まれる情報を電子データでやり取りした場合には、そのデータの保存義務や保存方法についても「電子帳簿保存法」に基づいて定められています。したがって、所得税法や法人税法において保存義務がある場合には、特に「電子取引」について確認する必要があります。
税金を納める人を「納税者」と呼びますが、税法にはこの用語は登場しません。申告書を作成する際、所得税法や法人税法、消費税法など、それぞれの法律において帳簿や書類を保存する義務が課せられている人が存在します。
例えば、所得税法では「居住者」、消費税法では「事業者」、法人税法では「青色申告法人や連結法人などの法人」となっています。このように、電子帳簿保存法においてはこれら全ての人たちを「保存義務者」と呼びます。したがって、保存義務者はそれぞれの法律において帳簿や書類の備付けをしなければならない人たちを指します。
保存義務は、税務署からの調査などに必要な規定であり、税務署から連絡があった場合は、保存義務者は法律で義務付けられた帳簿や書類を提示する必要があります。たとえば、企業が法人税と消費税の調査を同時に受ける場合、保存義務者は法人であり、同時に事業者でもあることになります。調査の際には、法人税法や消費税法に従って作成された帳簿書類を提示することが前提となります。紙で保存している場合も、電子データで保存している場合も同様に扱われますが、電子データで提示する場合は、電子帳簿保存法を理解しておくことが重要です。
2022年1月から施行された改正電帳法には、特に注目が集まっています。その理由は、「電子取引」に関するデータ保存の義務化が盛り込まれたことです。これにより、2023年12月末までの2年間に行われた電子取引については従来どおりプリントアウトして保存することが認められましたが、中小企業、特に小規模企業・個人事業者の経理にとって、対応が難しいという課題がありました。
改正電帳法の施行によって、電子帳簿の保存方法について、より一層重要性が高まります。それに加えて、電子帳簿の保存方法に関するルールが改正されることで、細かいところまで対応が必要になるかもしれません。
税務調査などで電子帳簿の提出が必要になった場合には、改正電帳法に基づき、適切な保存方法を選択する必要があります。適切な方法を選ぶためには、改正電帳法に関する理解が必要です。経理に携わる方は、改正電帳法についてしっかりと学び、適切な対応を行うようにしましょう。
① 電子帳簿等保存
② スキャナ保存
③ 電子取引データ保存
電子帳簿等保存は、会計ソフトで作成した帳簿や決算関係書類などを、電子データのまま保存することです。スキャナ保存は、紙で受領・作成した書類を画像データで保存することです。電子取引データ保存は、紙でやりとりしていたものを、データでやりとりした場合に必要とされる保存方法です。
ただし、ネット通販を利用した場合には、必ずしもデータ保存が必要というわけではありません。紙の領収書などをデータで受け取った場合には、データ保存が必要です。また、今までは出力した紙で保存することが認められていましたが、今後は、オリジナルの電子データの状態で保存する必要があります。ただし、2023年12月末までの2年間に行われたものについては、出力した紙で保存することも可能です。
企業が電子取引データを電子データで保存することは、書類のスペースを節約でき、整理がしやすく、生産性を高めるために有用です。しかし、電帳法では、電子データで保存する場合に必要な要件が定められています。
保存時に必要な要件には、以下のものがあります。
この書類には、保存システムの仕様、データのバックアップ方法、セキュリティ対策などが含まれます。
これは、保存したデータを適切な方法で閲覧できるようにするための装置です。
保存したデータが必要なときにすぐに見つけることができるように、データを検索するための機能を確保する必要があります。
保存したデータが正確であることを証明するために、データの改ざんや偽造を防止するための措置が必要です。
電子取引データを保存する際の要件は、上記の4つですが「1.システム概要に関する書類の備え付け」と「2.見読可能装置の備え付け」は、税務職員や企業自身がデータを確認するために必要なものです。一方、「3.検索機能の確保」と「4.データの真実性を担保する措置」については、対応が求められます。
「3.検索機能の確保」に関しては、検索条件として「取引年月日」「取引金額」「取引先」が必要とされています。検索方法としては、専用ソフトでの機能備え、ファイル名を「20221101_(株)データ・ファー・イースト社_110000」のようにしておくことでフォルダの検索機能を使用する方法、Excel等で索引簿を作成し、ファイルと関係付けて検索する方法があります。
「4.データの真実性を担保する措置」については、以下のいずれかを行う必要があります。
A)タイムスタンプを付与されたデータを受け取る
B)データに速やかにタイムスタンプを押す
C)データの訂正・削除が記録される又は禁止されたシステムでデータを受け取って保存する
D)不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用する。
Aは取引先、Bは自社でタイムスタンプを付与できるシステムを導入する必要があります。Cについても、システム導入が必要であり、データの保存とやりとりはそのシステム内で行う必要があります。Dについては、自社で電子データの取り扱いについての規程を定めることが求められており、国税庁が公表しているサンプル等を活用する方法があります。
なお、電子取引データの保存システムによっては、データのやりとりがそのシステム外で行われる場合もあるため、真実性の担保はDの事務処理規程で行われることが多いようです。
ここからは、小規模企業や個人事業者に適した、電子取引データ保存についての対応策です。 紙で保存するか、データで保存するかは、保存義務者が選択できるため、電子帳簿等保存・スキャナ保存については、これまで通りの方法でも問題ありません。
しかし、2024年1月からは、電子取引データ保存に対応する必要がありますので、準備を早めに行うことをお勧めします。書類の数が少なく、担当者が決まっており、運用方法が確立している場合には、以下の方法が適しているかもしれません。
「3. 検索機能の確保」: 検索機能を確保するために、電子データのファイル名に日付、取引先、金額を付与するか、または日付、取引先、金額を電子データに関連付ける索引を作成します。
「4. 真実性の担保」: 新しいシステムを導入することは費用がかかりますので、「不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程」を整備・運用することが、最も簡単な方法です。この規程のテンプレートは国税庁のウェブサイトからダウンロードすることができ、自社の方法に合わせて、ファイル名の付与や索引の作成など、自社の手法に沿って規程を作成することができます。これにより、不当な訂正削除を防止できます。
2022年1月から予定されていた電子取引に関するデータ保存の義務化は、2023年12月末までに行われたものについては、一時的に紙媒体での保存が認められることとなりました。しかし、今後はデジタル化や電子化が進むことが避けられないでしょう。
電子取引に関するデータ保存の義務化は、2024年1月から実施されます。また、2023年10月からは「インボイス制度」も開始されます。経理業務を取り巻く環境が大きく変化します。経理部門を内製化にこだわるのではなく、こういった法改正にも自動的に対応できる当社のアウトソーシングなどに切り替えることで、現場の負担を減らし、生産性の高い部門に自社リソースを注力させ、さらに強い企業づくりを行っていただくことをお奨めします。