総務省の「就業構造基本調査」によると、日本には「自営業を営む起業家」と「会社役員などに就いている起業家」を合わせて約514万人の起業家がおり、これは全人口の約4.0%に相当するのだとか。
そもそも起業とは、一般的に自分でビジネスをスタートすることを指しますが、その選択肢は「個人事業主」と「法人設立」の2つです。
起業には自由や成長の機会がある一方で、経済的リスクや時間的な負担も伴います。メリットとリスクをしっかりと理解し判断することが重要です。
起業する際に選択する事業形態は、「個人事業主」と「(株式会社などの)法人」があります。
一般的に、小規模で迅速な意思決定が求められるビジネスや初期費用を抑えたい場合に適しているのが個人事業主。
一方で法人設立は、社会的信用度の向上や資金調達の柔軟性を重視し、中長期的な成長を目指すビジネスに向いているでしょう。
それぞれメリットとデメリットがあるので、自分のビジネスの特性や目標に応じて最適な形態を選ぶことが重要です。
まずは個人事業主と法人設立の主なメリットとデメリットを比較した表をご覧ください。
- 設立手続きが比較的簡単で費用も少なく、開業届を税務署に提出するだけで開始できる
- 確定申告で青色申告を選択することで、65万円の特別控除や損失の繰越控除などの税制上のメリットが受けられる
- 法人に比べて会計処理が簡単で、会計ソフトを利用すれば一人でも管理が可能
- 経営や運営に関する意思決定が一人で行えるため、柔軟かつ迅速に対応できる
- 事業に関連する全ての責任を個人が負うため、借金や損害賠償などのリスクも全て個人の負担となる
- 法人に比べて社会的信用度が低く、大規模な取引や融資の際に不利になることも
- 収入が増えると累進課税制度により高い税率が適用され、法人に比べて税負担が重くなる場合がある
- 有限責任であり、出資額以上の責任を負わないため、個人の財産を保護できる
- 法人設立により社会的信用度が高まり、大規模な取引や融資の際に有利
- 株式発行や融資を通じて多様な資金調達が可能
- 所得が一定以上になると、法人税率が個人事業主の所得税率よりも低くなるため、節税効果が期待できる
- 設立手続きが複雑で、登記費用や登録免許税などの初期費用がかかる
- 法人設立後も各種税金や社会保険の負担があり、個人事業主に比べて運営コストが高くなる
- 会計処理が複雑で、決算書の作成や税務申告のために専門家の支援が必要になることが多い
- 株主や取締役会の存在により、意思決定が複雑化し迅速な対応が難しくなる場合もある
自分のビジネスの規模や将来の展望に応じて、最適な事業形態を選択することが重要です
先述のとおり、起業の事業形態は「個人事業主」と「法人」があります。
まずはどちらも、ビジネスアイデアを具体化し、対象市場や顧客層を明確にすることが大切。
ビジネスアイデアの確立したら、目標や事業の概要、ターゲット市場やマーケティング戦略、財務計画をまとめ「事業計画書」を作成しましょう。
個人事業主は、事業計画書は必ずしも作る必要はありませんが、融資を受ける際に必要です。
法人においても事業計画書を作成する義務は定められていませんが、融資や投資を受けるために、また補助金申請をするためには必要不可欠。会社の成長のためにも作成しておくべきです。
そこから先のステップは「個人事業主」と「法人」では大きく異なります。
- 税務署に開業届を提出
- 青色申告承認申請書の提出
- 事業用銀行口座の開設
- 必要な許認可の取得
- 保険や年金の手続き
【1】まずは所轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(いわゆる開業届)」を提出します。開業届の提出は開業後1か月以内が推奨されていますが、罰則はありません。
【2】開業届の提出後に「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、確定申告で青色申告が可能になります。青色申告を希望する場合は、事業開始後2か月以内に提出しましょう。
【3】事業専用の銀行口座を開設します。個人の口座と分けることで、財務管理が容易に。
【4】飲食業、医療業など、業種によっては事前に許可や資格が必要な場合があるため、業種に応じた許可を取得します。
【5】国民健康保険や国民年金への加入手続きを行えば、いよいよ事業の運営開始です。
- 開業届の提出:無料
- 青色申告承認申請書の提出:無料
- 事業用銀行口座開設:無料
- 必要な許認可:許認可申請にかかる手数料(数万円程度)が必要なことも
個人事業主として起業する場合は、基本的にそれほど費用はかかりませんが、オフィスや店舗を借りる場合は家賃が必要ですし、事業用設備や備品、家具家電などの初期費用も必要な場合もあります。
- 会社の基本事項の決定
- 定款の作成
- 出資金の払込
- 法務局へ会社の設立登記を提出
- 税務署へ法人設立届出書を届出
- 社会保険と労働保険の加入
- 事業用銀行口座の開設や会計システムの導入など
【1】会社名(商号)を決定し、商号登記を行います。
【2】会社の商号や目的、所在地や資本金などの基本事項を記載した「定款」を作成します。作成した公証役場で認証を受ける必要があり、電子定款で作成すると印紙税(4万円)が不要に。
定款の作成は専門知識がないとかなり難しいため、ノウハウをもった専門家に相談することをおすすめします。
【3】発起人が会社の銀行口座に出資金を払い込み、払込証明書を取得します。
【4】法務局に設立登記を行います。登記申請書、定款、登録免許税、払込証明書などを提出し、登記が完了すると法人として正式に設立されます。登録免許税の税率は資本金の0.7%。ただし最低税額は15万円です。
【5】設立後、税務署に「法人設立届出書」を提出します。期限は設立の日から2か月以内です。また青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も提出します。
【6】法人は社会保険や労働保険への加入が義務付けられているため、所轄の年金事務所や労働基準監督署で手続きを行います。会社設立から5日以内に届け出なければなりません。
【7】法人名義の銀行口座を開設し、事業の収支を管理します。そのほか法人としての事業を行う場所を確保したり、必要な設備や備品を揃えたり、会計システムを導入したりし、ビジネスをスタートさせます。
- 定款の作成と認証:定款の作成費用(自分で作成する場合は無料、専門家に依頼する場合は数万円)、公証役場での定款認証費用(約5万円)
- 登記費用:登録免許税:資本金の0.7%(最低15万円)
- 資本金:設立時に必要な資本金(最低1円~。一般的には数十万円以上)
- 保険料:事業活動に伴う各種保険(例:損害保険、労災保険)
- 必要な許認可:許認可申請にかかる手数料(数万円程度)が必要なことも
- 専門家への報酬:税理士や会計士の顧問料(月額数万円)
そのほかオフィスや店舗を借りる場合の家賃や、ソフトウェアライセンス費用、事業用設備や備品、家具家電などの初期費用、ウェブサイトの制作費用、広告費用も必要な場合もあります。
ここまで事務的な起業のステップを紹介してきましたが、ここからは起業前に必要な準備や心得について紹介していきます。
起業に向けた準備や心得として欠かせないのは「事業計画」「起業資金の確保」「起業する覚悟と家族の理解」です。
起業前には、成功を目指して計画を立て、準備を整えることが重要です。
市場調査や競合分析などを行い、ビジネスアイデアを具体化します。そしてミッションやビジョン、マーケティング戦略や財務計画など詳細なビジネスプランを立て、事業計画を作成することが大切です。
事業計画書を作ることで起業のアイデアを整理し、将来の展望を明確にする手助けとなります。頭の中で考えていることを具体的な書面にし、より具体的な事業戦略を立てることが事業の成長につながるでしょう。
具体的な事業計画が固まったら、次は起業資金の準備です。事業計画書を元に必要な資金額を算出し準備を始めます。
起業を目指して資金を貯めたり調達したりしなければなりません。自己資金だけでは起業が難しい場合、金融機関からの融資や補助金、助成金の利用も検討しましょう。事業計画書はこれらの資金調達にも有効です。
起業には、自身の覚悟と家族の理解が不可欠です。
もちろん自身の情熱はとても大切ですが、同時に冷静な判断力も必要。感情に左右されず、データや現実に基づいた判断を心がけましょう。
また短期的な成功にとらわれず、長期的な成長と持続可能なビジネスを目指す必要があります。常に最新の情報を収集し、自分自身をアップデートする努力を惜しまないようにしましょう。
そして家族の理解と協力は必要不可欠です。十分に話し合い、説得ではなく理解を求めましょう。
今回は、起業の手続きやメリット・デメリットを紹介しました。
個人事業主は設立手続きが簡単で初期費用が少なく、迅速な意思決定が可能ですが、全責任を個人が負い、社会的信用度や資金調達には不利といえます。
一方で法人設立は、社会的信用度が高く、資金調達が容易で個人の財産を保護できますが、設立手続きが複雑で運営コストが高くなります。
事業を成功させるためにも、起業のメリットとリスク、そして手続き方法もしっかりと理解し進めていきましょう。
また起業にはアウトソーシングを活用するのもおすすめです。詳しくはDFEにお気軽にご相談ください。