【不適切会計の原因とは】2022年度・上場企業の開示は55社

不適切会計とは、故意またはケアレスミスなどさまざまな要因によって引き起こされる、間違った会計処理のこと。横領など意図的である場合もありますが、経理担当者の知識不足によって引き起こされるヒューマンエラーも不適切会計です。

よく似た言葉に「不正会計」というものがありますが、これは不適切会計の中でも意図的に改ざんしたり隠蔽したりすることを指します。

東京商工リサーチによりますと、2022年度に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は55社、件数は56件だったそうです。

今回は2022年度開示の内訳をもとに、不適切会計がもたらす影響や対策などを考えていきましょう。

開示企業数2022年度開示企業数は55社

開示した55社(56件)は次のとおりです。

ナカノフドー建設/⻑野計器/ダイイチ/富士古河E&C/広済堂ホールディングス/ルーデン・ホールディングス/オウケイウェイブ/ヨシムラ・フード・ホールディングス/穴吹興産/ディー・ディー・エス/グローム・ホールディングス/ウェッズ/RISE/三協フロンテア/大東建託/飯田グループホールディングス/クリーマ/東京産業/元気寿司/レスターホールディングス/アルテリア・ネットワークス/ソフィアホールディングス/ダイオーズ/東洋エンジニアリング/ムトー精工/フレアス/東海リース/TOKAIホールディングス/ヤマト/信和/シーズメン/ヘリオステクノホールディング/オークファン/バリューゴルフ/日本食品化工/フジオフードグループ本社/グローバルキッズCOMPANY/大和⾃動⾞交通/東京衡機/アマナ/アイ・エス・ビー/サムティ/バンダイナムコホールディングス/フォースタートアップス/ウッドフレンズ/大豊工業/パスコ/サンリオ/新日本空調/ヤシマキザイ/ギークス/ベクター/ビジョナリーホールディングス/きょくとう/ダイダン/ルーデン・ホールディングス

なおルーデン・ホールディングス(株)は、2022年の5月に海外非連結子会社発⾏のルーデンコインおよびBitcoinの調達状況で、2023年3月に海外非連結子会社発⾏のルーデンコインおよびBitcoinの追加調査で開示。

東京証券取引所は同社の内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、同社株式を特設注意市場銘柄に指定し、併せて、株主および投資者の信頼を毀損したとして、2,000万円の上場契約違約金の支払いを求めました。

不適切会計の内容別内訳

2022年度の不適切会計の内容別の内訳は、最多が経理や会計処理ミスなどの「誤り」で29件、次いで従業員の「着服横領」が14件、そして架空売上の計上や水増し発注などの「粉飾」が13件でした。

発生当事者別内訳

発生当事者別では、最多は「会社」の23社。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが目立ちました。

「子会社・関係会社」の16社で、売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立ち、次いで「従業員」の14社、「役員」の2社となっています。

産業別内訳

産業別では、「製造業」の13社。国内外の子会社・関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多いそう。

「運輸・情報通信業」は10社で、子会社の不適切会計による「粉飾」、子会社社員や役員の「着服横領」などのケースが目立ちました。

「建設業」と「不動産業」は各7社で、子会社による粉飾や社員の着服横領が多いという結果です。

不適切会計がもたらす影響

不適切会計により、会社はもちろん、取引先や投資家、株主、銀行、市場など、さまざまな方面で深刻な問題となる可能性があります。

赤字決算を意図的に仮装隠匿した場合、刑事罰・行政罰・民事責任など、厳しい罰則を受けることも。また脱税の場合は、追徴課税・重加算税などが課されることがあります。

投資家や利害関係者が大きな損失を被る可能性も。

信頼を失い、銀行からの融資が拒否されたり、融資の金利が上昇したりすることも考えられます。

不適切会計を防止するための対策

2022年度の不適切会計の最多は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」でした。つまりその多くはヒューマンエラーです。経理担当者の知識不足などによって引き起こされることが多いでしょう。

また着服横領や粉飾なども、そういった処理ができてしまう体制があることが問題です。

では不適切会計を防止するためには、どんな対策をとればよいのでしょうか。

まずは経理担当者のスキルアップを図るとともに、内部統制システムを強化し、コンプライアンス教育をしっかり行いましょう。

またこれまで当ブログでも紹介しているように、一人経理や少人数での会計処理は、やはりミスや不正が発生しやすい環境といえます。

スキルを持った会計人員を確保することが望ましいですが、人手不足の昨今、なかなか難しいかもしれません。そんな時は経理のアウトソーシングを活用するのもおすすめです。

まとめ

今回は2022年度に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業のデータを基に、不適切会計がもたらす影響や対策などについて紹介しました。

上場企業であっても不適切会計が行われてしまうのですから、中小企業ではどのようになっているのかは容易に想像がつきますね。

「わが社は大丈夫」と楽観的に捉えず、不適切会計が起こらない体制を整えることが大切です。