企業と求職者を繋ぐ重要な役割を担う「人材派遣業」。
しかし、その設立には、厚生労働大臣の許可が必要であり、いくつかの厳しい要件をクリアしなければなりません。
一般のビジネスよりも要件・提出書類・初期コストが大きいため、事前準備が不可欠。特に資金面でのハードルが高いと感じる方も少なくないでしょう。
ここでは、2025年版の最新情報をもとに、人材派遣業の設立許可を得るための主要なポイントを分かりやすく解説します。
なぜ「許可」が必要なのか
人材派遣業は、派遣先企業や派遣労働者に対して継続的な責任を伴う事業です。
派遣労働者の保護と派遣先企業の安心を確保するため、国(厚生労働省・都道府県労働局)は許認可制度を設けています。
すべての要件を満たさないまま運営すると、許可取得に失敗したり、行政指導・是正命令を受けたりするリスクがあるため、正しい知識を身につけ、しっかり事前準備をしましょう。
許可取得における要件
先述のとおり、「人材派遣業」の設立には、一般のビジネスに比べ、要件や提出書類が多いです。しっかりと確認して準備を進めましょう。
資金要件
人材派遣業を始める上で、まず最初に直面するのが「財産的基礎要件」です。許可取得には、以下の基準をすべて満たす必要があります。
- ・資本金または純資産が 2,000万円以上
- ・現金・預金が 1,500万円以上
- ・純資産が負債総額の7分の1以上
※ 複数の事業所を運営する場合は、これらの金額を事業所数で調整する必要があります。
これらの要件を満たすためには、規定額よりも多めに資金を用意しておくことが推奨されます。
特に設立初期は予想外の出費も発生しやすいため、余裕のある資金計画を立てることが、事業の安定的な運営に繋がるでしょう。
人的体制・役割要件
派遣事業所の数に応じて、事業所ごとに1名以上の「派遣元責任者」を選任する必要があります。
この責任者は、厚生労働省所管の「派遣元責任者講習」を受講しなければなりません。講習の有効期間は3年で、更新が必要です。
また会社の代表者や役員については、次のような条件を満たす必要があります。
- ・成年であること(未成年は対象外)
- ・日本国内に安定した居住地を有していること
- ・心身ともに健康で、職務遂行に支障がないこと
- ・禁固以上の刑に処されていないこと
- ・破産手続開始の決定を受けていないこと(復権済みの場合を除く)
- ・許可取り消し後5年を経過していない者でないこと
- ・労働基準法など、労働関係法令に違反して罰金以上の刑に処され、5年を経過しない者でないこと
事務所・設備要件
事業所は、事業を適切に運営できる適切な場所にあることが求められます。
- ・事業所の面積は20㎡以上を確保すること
- ・面接・面談を行うスペースや、プライバシーを確保できるレイアウトであること
- ・風俗営業等の規制対象となるような施設が近隣にないこと
これらの要件は、派遣社員の安心・安全を守るために不可欠なものです。
派遣社員のキャリア形成支援の義務
2025年版の派遣法では、派遣社員のキャリア形成を支援することが義務付けられています。
全ての派遣社員に対し、段階的かつ体系的な教育訓練計画を立て、教育訓練を実施しなければなりません。
この取り組みは、派遣社員のスキルアップを促し、企業への貢献度を高めるだけでなく、派遣会社自体の信頼性向上にも繋がります。
申請手続きと必要書類の全体像
人材派遣業の許可申請には、多くの書類が必要です。詳細な書式名・様式番号は、申請先の都道府県労働局で確認してください。
以下が提出すべき主な書類です。
- ・労働者派遣事業許可申請書
- ・事業計画書
- ・事務所使用権を証する書類(賃貸借契約書等)
- ・個人情報管理規程
- ・派遣元責任者講習の受講証明書
- ・住民票、履歴書(責任者/代表者)
- ・就業規則、マニュアル等 …など
法人の場合は、以下が付加書類です。
- ・定款
- ・登記簿謄本
- ・役員の住民票・履歴書
- ・決算書類 …など
個人事業主の場合は、以下が付加書類です。
- ・住民票
- ・履歴書
- ・所得税確定申告書(写し) …など
会社設立に関する書類に加え、役員や事業所の情報、事業計画書、財産状況を証明する書類など、多岐にわたります。事前にしっかりと確認し、漏れがないように準備を進めましょう。
なお、新規の許可は3年有効。期限満了前に更新手続きを行う必要があり、更新の際は、手数料や登録免許税などが必要です。
助成金制度の活用
公的な助成金・支援制度を活用できることがあります。以下は代表的なものです。
- ・キャリアアップ助成金
- ・地域雇用開発助成金
- ・人材確保等支援助成金
要件を満たすことで資金的な支援を受けることが可能です。積極的に情報を収集し、活用を検討してみましょう。
まとめ
A.現在は区分が廃止され、すべて「労働者派遣事業」として許可制に統一
A.厚生労働大臣の「労働者派遣事業許可」
A.基準資産額が2,000万円以上、かつ現金・預金が1,500万円以上
A.厚生労働省所管の「派遣元責任者講習」を受講する
A.新規で取得した場合の有効期間は3年
人材派遣業の設立は、決して簡単なことではありません。
しかし、資金・人員・事務所の要件を正確に理解し、派遣社員のキャリア形成を真摯に支援する姿勢を持つことで、許可取得への道は開かれます。
計画的な準備と、社会に貢献する事業を創出するという強い意志を持って、ぜひ挑戦してください。
DFEでは、人材派遣についてもサポートしております。お気軽にご連絡くださいませ。