【オープンイノベーション促進税制とは?】要件や見直しなどについても解説

オープンイノベーションとは、社内外でイノベーション要素を最適に組み合わせ、効率を最大化すること。しかし日本企業は諸外国に比べ、オープンイノベーションの実施に消極的な傾向にあります。

今回紹介する【オープンイノベーション促進税制】は、国内の事業会社やその投資部門が、スタートアップ企業に出資することで、所得控除(損金算入)を受けられる制度。政府はこの制度によってオープンイノベーションを推進しています。

令和5年度の税制改正で、M&Aによる発行済株式の取得も対象となりました。

今回は【オープンイノベーション促進税制】について解説します。

オープンイノベーション促進税制とは

オープンイノベーション促進税制とは、国内の対象法人等とスタートアップ企業の協業を促進することを目的に創設された制度です。

対象法人はスタートアップ企業の株式を取得した場合、株式価額の25%を課税所得から控除することができます。節税効果だけでなく、投資先であるスタートアップ企業の経営資源を活用することも期待できるでしょう。

一方でスタートアップ企業にとっては、成長に欠かせない資金を集められ、出資企業が持つ設備やサプライチェーンなどを活用し、成長をより加速させるチャンスが広がります。

なおオープンイノベーション促進税制には「新規出資型」と「M&A型」があります。

新規出資型

国内の対象法人等がスタートアップ企業の株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度

M&A型

国内の対象法人等がスタートアップ企業のM&Aを行った場合、取得した発行済株式の取得価額の25%を課税所得から控除できる制度

令和5年度税制改正による変更点

令和5年度税制改正で、オープンイノベーション促進税制の内容を変更。主な変更点は次の2点です。

  • M&A型の新設
  • 新規出資型の見直し

M&A型の新設

以前は新規発行株式を取得する場合でしかオープンイノベーション税制の対象となりませんでしたが、令和5年度税制改正で、M&Aによって発行済株式を取得した場合でも控除対象になると拡充されました。

株式取得額が5億円以上のM&Aが対象。所得控除の上限額は1件あたり50億円です。なお新規出資型と合わせて、年間1社125億円(取得額換算500億円)までとなります。

所得控除を受けるには、5年以内にM&Aをしたスタートアップ企業が成長要件を達成したことの証明を受けることが必要があります。受けていない場合、所得控除分は一括取り戻しとなるため注意が必要です。

新規出資型の見直し

新規出資型の見直しにより、過去にオープンイノベーション促進税制(新規出資型)の証明を受けている場合、当該証明を受けた出資先のスタートアップ企業への追加出資(新規発行株式の取得)は対象外。ただし、追加出資によって議決権の過半数を有することになる場合は対象となります。

所得控除の上限額は、1件あたりは12.5億円。M&A型と合わせて年間1社125億円までとなります。

適用要件

出資をする側、出資をされる側、それぞれの要件は以下のとおりです。

対象法人(出資側)の要件

  • 青色申告書提出法人であること
  • スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指していること
  • 次のいずれかの法人形態であること(株式会社/相互会社/中小企業等協同組合/農林中央金庫/信用金庫及び信用金庫連合会)

一定の要件を満たすCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)経由で出資した場合も対象となります。

スタートアップ企業(受け手側)の要件

  • 株式会社
  • 設立10年未満(要件を満たす場合設立15年未満)
  • 未上場であり、かつ未登録であること
  • 既に事業を開始している
  • 対象法人とのオープンイノベーションを行っている、または行う予定
  • 一つの法人グループが株式の過半数を有していない
  • 法人以外の者(LPS、民法上の組合、個人等)が3分の1超の株式を有している
  • 風俗営業または性風俗関連特殊営業を営む会社でない
  • 暴力団員等が役員または事業活動を支配する会社でない

「新規出資型」は外国法人であっても対象。「M&A型」については内国法人限定です。

出資要件

「新規出資型」と「M&A型」のそれぞれで要件が異なります。

新規出資型

  • 資本金の増加を伴う現金による出資であること
  • 1件あたり1億円以上の出資であること
  • オープンイノベーションに向けた取組の一環で行われる出資であること
  • 取得株式の3年以上の保有を予定していること
  • 純出資等を目的とする出資ではないこと

M&A型

  • 議決権の過半数を有することとなる株式の取得であること
  • 1件あたり5億円以上の出資であること
  • オープンイノベーションに向けた取組の一環で行われる出資であること
  • 取得株式の5年以上の保有を予定していること
  • 純出資等を目的とする出資ではないこと

申請フロー

申請の手順は以下の通り。なお出資側の法人のみ手続きが必要です。

  1. 経済産業省への事前相談
  2. スタートアップ企業への出資
  3. 経済産業大臣へ証明書の交付申請
  4. 経済産業大臣による証明書の交付
  5. 税務申告

オープンイノベーション促進税制は、電子申請サービス「gBiz FORM」を用いて手続きします。

適用期限

オープンイノベーション促進税制の適用期限は、令和6年3月31日まで延長されています。

所得控除を受けた翌事業年度以降も、5年間継続してスタートアップ企業とオープンイノベーションを行う場合は、事業年度末ごとに経済産業大臣に継続証明書の交付を求める手続きが必要です。

まとめ

今後日本経済が活性化するためには、オープンイノベーションの促進は非常に重要でしょう。

オープンイノベーション促進税制は、出資する側・受ける側のどちらにもメリットがある制度です。ぜひ活用を検討してはいかがでしょうか。

しかしオープンイノベーション促進税制は制度が複雑なうえ、特別勘定処理が必要です。お困りの際は、経理代行のDFEにお気軽にご相談ください。