柔軟な働き方として多くの企業で利用されている「派遣労働」。
派遣労働者を受け入れる企業には、「抵触日」という法的な制約が存在します。
「抵触(ていしょく)」とは、法律や規則にふれることをいいます。抵触日を正しく理解し遵守することは、労働環境を整えるために非常に重要です。
今回は派遣の抵触日について解説し、企業が取るべき対応策について紹介します。
派遣の抵触日とは、派遣労働者が同じ組織や職場で働ける制限を過ぎた翌日を指します。
同一の派遣労働者が同一の職場で働ける期間は、原則として3年と労働者派遣法で定められています。
この3年を超えた場合、その派遣先企業はその派遣労働者を直接雇用するか、別の派遣労働者に代える必要があります。
つまり抵触日は、3年の期間が満了した次の日です。
例えば、2021年6月1日より派遣労働者を受け入れた場合、派遣可能期間は丸3年の2024年5月31日なので、抵触日は2024年6月1日です。
抵触日には「事業所単位」と「個人単位」の2種類があり、どちらも期限は3年です。
個人単位と事業所単位の派遣期間制限では、事業所単位のほうが優先されるため、個人単位の抵触日より事業所単位の抵触日が先に来た場合、就業期間が3年未満になる場合もあります。
同一の事業所で派遣労働者を雇用し続けられる期間は、原則として3年までとされています。
例えば派遣労働者のAさんが2年で辞めた場合、次に来た派遣労働者Bさんは残り1年しか働けません。ただし派遣先企業が継続して派遣労働者を受け入れたい場合は延長可能です。
個人単位の派遣期間は、同一の派遣労働者を同じ部署で受け入れる場合、3年が上限とされています。
ただし別の課やグループなどに異動すれば、3年経過後も働くことが可能です。
例えば同じ社内で経理部から総務部に異動した場合は、再カウントが始まります。しかし経理課1係から経理課2係への異動はできません。
抵触日が設けられた背景には、派遣労働者の雇用安定を図ることが挙げられます。
長期間にわたり派遣労働を続けることは、雇用の不安定さを助長し、派遣労働者のキャリア形成や生活の安定に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、法的に派遣期間の上限が設定され、企業が派遣労働者を無期限に利用することを防ぐための仕組みとして抵触日が存在します。
抵触日は、派遣労働者が初めてその職場で就業を開始した日から起算され、原則として3年です。
この期間内に派遣労働者が同一の部署で働いた場合、企業はその3年間の期間内に対策を講じる必要があります。
派遣労働者が抵触日を迎える場合、派遣先企業は以下の対応を検討する必要があります。
- 直接雇用への切り替え
- 配置転換
- 派遣契約の終了
派遣労働者を正社員や契約社員として直接雇用することで、抵触日を回避できます。
直接雇用は正社員、契約社員、パート社員といった雇用形態を提案することが可能。もちろん本人の希望を確認し、両者が合意する必要があります。
派遣労働者を他の部署や職場に配置転換することも一つの方法です。配置転換により、法的には同一部署での派遣労働期間がリセットされ、新たな期間が開始されます。
抵触日を迎える前に派遣契約を終了し、別の派遣労働者を受け入れることも考えられます。しかし、この方法は労働者の雇用安定に対する配慮が欠けるため、慎重な判断が必要です。
抵触日を無視して派遣労働者を継続して利用することは、法的なリスクを伴います。労働者派遣法違反とみなされ、行政指導や罰則の対象となる可能性も。また、労働者との信頼関係を損ない、企業の評判にも悪影響を与えることがあるため、しっかりと対応しましょう。
派遣可能期間の制限を受けない派遣労働者は以下の通りです。
- 派遣会社で無期雇用されているスタッフ
- 60歳以上の派遣労働者
また、対象外となる業務は以下のとおり。これらの業務は、派遣期間制限が適用されないため、このあとに触れる抵触日の通知も不要です。
- 日数限定業務(1ヶ月のうち10日以下かつ社員の所定労働日数の半分以下の業務)
- 有期プロジェクト業務(事業の開始や終了など特定の期間内で完了する業務)
- 産前産後・育児休業・介護休業代替業務(休業中の社員の代替業務)
派遣先企業は、派遣労働者受入時の労働者派遣契約を締結する際、派遣会社(派遣元)へ抵触日を通知することが法律で義務付けられています。
派遣元は派遣先から抵触日の通知がない場合、労働者派遣契約を締結してはいけないとされています。
派遣の抵触日は、同一の派遣労働者が同じ事業所で働ける期間が法的に制限されており、原則として3年です。
派遣先企業は、この期間を超える場合、直接雇用や配置転換、派遣契約の終了を検討する必要があります。
抵触日を無視すると法的リスクがあり、罰則や企業の評判に悪影響を及ぼす可能性も。派遣先企業は抵触日に関して正しく理解し、派遣労働者を含めた全社員が働きやすい環境を整えることが重要です。