【GmailのGmailifyとPOPの仕様変更】接続終了の危機と対策

ビジネスの現場で、Gmailを「ハブ」として利用している方は多いはずです。

会社のアドレス(OutlookやYahoo!、自社ドメイン)をGmailに集約し、一括で管理するスタイルは、業務効率化の定番でした。

しかし、Googleは今、この「外部アカウントとの連携方法」にメスを入れています。

公式サポートページで発表された内容によれば、長年愛用されてきたGmailifyの新規設定終了と、古いPOP/IMAP接続の完全廃止が決定しました。

今回は、この変更がビジネスにどのような影響を与えるのか、そして私たちは今すぐ何をすべきなのかを詳しく解説します。

何が変わる?Google公式発表の重要ポイント

Googleが発表した変更点は、大きく分けて以下の2点です。

  • Gmailifyの新規連携が「停止」
  • 「安全性の低いアプリ」によるPOP/IMAP接続の終了

Gmailifyの新規連携が「停止」

Gmailifyとは、OutlookやYahoo!メールのフォルダ構成やスパムフィルタを維持したまま、Gmailのインターフェースで利用できる便利な機能です。

2024年7月15日以降、特定のプロバイダー(Outlook.comやYahoo!など)におけるGmailifyの新規追加ができなくなりました。

すでに設定済みのものは当面継続利用できますが、一度解除すると再設定はできません。

「安全性の低いアプリ」によるPOP/IMAP接続の終了

これが最もインパクトの大きい変更です。

2024年9月30日をもって、ユーザー名とパスワードだけで接続する「安全性の低いアプリ(LSA)」経由のPOP/IMAPアクセスが完全にサポート終了となりました。

今後は、高度な認証方式である「OAuth(オー・オース)」に対応していない古いメールソフトやスクリプトからは、Gmailにアクセスできなくなっています。

なぜ今、Googleは「不便」を強いるのか?

利便性を損なってまでGoogleがこの変更を強行する理由は、ひとえに「セキュリティの近代化」です。

長年使い慣れた仕組みを変えるのは心理的な負担が大きいものですが、メールを取り巻く脅威は当時とは比べものにならないほど深刻化しています。

今回の変更は、ビジネスの根幹である情報を現代の高度なサイバー攻撃から守り抜くための『不可避な決断』です。

パスワード認証の限界

従来のPOP接続で使われていた「ユーザー名とパスワード」による認証は、一度情報が漏洩すると、第三者がどこからでもログインできてしまうという致命的な脆弱性があります。

OAuthへの完全移行

今回の変更で強制される「OAuth」は、パスワードを直接アプリに渡すのではなく、Googleの認証画面で「このアプリにアクセスを許可しますか?」と同意を得る仕組みです。

これにより、万が一デバイスを紛失しても、Googleのアカウント設定から一括でアクセス権限を剥奪できるようになります。

ビジネスにおけるメールは、機密情報の宝庫です。Googleは「利便性よりも、ビジネスを守るための堅牢性」を優先するフェーズに入ったと言えます。

ビジネスへの具体的な影響とリスク

この変更を放置すると、以下のような実務上のトラブルが発生します。

  • メールの受信停止
  • マルチデバイス管理の崩壊
  • 自動化ツールの停止

メールの受信停止

古いメーラー(Outlook2013以前など)を使用している場合、ある日突然、送受信ができなくなります。

マルチデバイス管理の崩壊

Gmailifyが使えなくなることで、スマホとPCで既読・未読が同期されないPOP接続に戻らざるを得ないケースが出てきます。

自動化ツールの停止

自社で開発したメール送信プログラムや、古いFAX/複合機の「メール転送機能」が動かなくなる可能性があります。

ビジネスパーソンが取るべき「3つの対策」

混乱を避けるため、以下のステップでメール環境の点検を行ってください。

ステップ1:既存のGmailifyアカウントを「削除しない」

現在、OutlookなどをGmailifyで連携している方は、絶対にその設定を解除しないでください。

前述の通り、一度削除すると二度とGmailifyとして再設定することはできません。もし設定を維持したいのであれば、そのまま使い続けるのが最善です。

ステップ2:メールソフトを最新版にアップデートする

もし古いOutlookやThunderbirdを利用してGmailを受信している場合、それらが「OAuth」に対応しているか確認してください。

以下のチェックリストで、お使いのソフトの対応状況を確認してみましょう。

非対応のソフトを使っている場合は、GmailのWeb版へ移行するか、最新のサブスクリプション型ソフトへの切り替えが必須です。

ステップ3:Gmailアプリでの「個別アカウント追加」を活用する

Gmailifyが使えない新規のアカウントについては、Gmailifyという「連携機能」を使うのではなく、Gmailアプリの中に「別のアカウント」としてOutlookやYahoo!を直接追加してください。

これにより、Gmailifyほどの高度な同期(フォルダ分けの共通化など)はできませんが、一つのアプリで複数のメールを安全に管理することは可能です。

【重要】「アプリパスワード」も恒久的な解決策ではない

これまでは、2要素認証を設定した上で「アプリパスワード」を発行すれば、古いPOPソフトでも接続できました。

しかし、Googleはこの「アプリパスワード」についても、今後はOAuthへの移行を強く推奨しており、利用範囲を段階的に縮小させています。

「とりあえずアプリパスワードで逃げる」という対応は、あくまで一時的な延命措置。長期的には「OAuth対応ソフトへの移行」または「Web版Gmailへの集約」が唯一の正解となります。

まとめ

何が変わった?
A:「OutlookなどをGmailと完全に同期させる便利機能(Gmailify)の新規受付停止」と、「ID・パスワードだけでつなぐ古い接続方式の廃止」
誰が影響を受けるの?
A:主に「何年も前の古いメールソフト」を使い続けている人。最新のスマホやPCでWeb版Gmailを使っている人は、基本的に影響はない
なぜ、わざわざ面倒な変更をするの?
A:昔の接続方式は、セキュリティが弱すぎるから

今回のGoogleの変更は、古き良き(しかし脆弱な)POP/IMAPの時代の終わりを告げるものです。

ビジネスパーソンにとって、メール環境の再構築は面倒な作業かもしれませんが、フィッシング詐欺やアカウント乗っ取りが巧妙化する現代において、「古い接続方式を捨てること」は、最大の防御策となります。

「Gmailifyは新規不可」「POP/IMAPはOAuth認証が必須」「古いソフトは捨て、モダンなツールへ移行」この3点を軸に、ご自身の、そして自社のメール環境を今一度見直してみてください。

変化の激しいITインフラに適応することこそが、ビジネスの安定性を支える基盤となります。

「設定が複雑でよくわからない」「自分の環境が対象なのか不安」という方、そのほかの設定も後回しになっていませんか。そういったご相談もDFEまでお気軽にどうぞ。


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