【不正経理事件簿】経理総務担当者ら2人が関与し助成金を不正受給

従業員の働きやすい環境を整えたり、事業の売上向上を目指したりするため、正しく活用されるべき給付金や助成金ですが、残念ながら虚偽の申請を行い不正受給する事業主もいます。

今回は、新潟県上越市の第3セクターで起こった雇用調整助成金など約3,900万円を不正受給した事件を紹介。

これまで当ブログで紹介してきた不正経理の多くは、会社の金を自分や家族の口座に振り込むなど私的な流用をする”横領”でしたが、今回はそうではないようです。決して他人事ではない不正経理について紹介します。

助成金不正受給の経緯

宿泊施設など合わせて3つの施設を委託され運営している「リフレ上越山里振興」は、2020年から2年以上にわたり、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金を合計約3,900万円を不正に受給していたそう。

関与したのは、経理総務担当者ら2人。

新型コロナの影響で休業をしたと、国に嘘の申請を行い不正受給。そのお金は、パートの職員が離職しないように実働時間より多い給与を支払うなど、主に会社の負債の返済などに充てられたとみられるということです。

経理総務担当者は「前社長に請われて財務立て直しのために入社し、赤字を出すなと言われていた。3セクの厳しい経営状況で重圧を感じて不正受給に関与してしまった」と説明しているそう。

会社経営を社員に任せていたことが浮き彫りとなった不正事件です。

発覚の経緯とその後の処分

同社の宿泊施設はコロナ禍でも施設を営業していましたが”休業”と偽って申請。2022年8月から行われた新潟労働局の調査で不正受給が発覚しました。

新潟労働局は、約3,900万円の全額返還のほか、年3%の延滞金(法定利息)と返還金額の2割相当額を請求。総額は、約4,941万円に及びますが、全額返還したそう。

「リフレ上越山里振興」は解散。債務超過状態での解散のため、債権者の同意を得て裁判所の監督下で清算を行う「特別清算」を申し立て、清算金6000万円は市が負担することになりました。

不正受給をしたらどうなるのか

不正受給とは、本来なら交付を受けられない給付金や補助金などを、不正な手段を用いて受給すること。実際に受給ができなくとも、不正な書類を提出して申請行為を行った時点で不正受給とみなされます。不正受給は犯罪ですので絶対にやめましょう。

2019年4月から、不正受給が厳罰化されました。内容の一部は以下のとおり。

  • 支給された助成全額返還にプラスし、違約金として20%相当額と年5%に相当する延滞金
  • 代表者の氏名や事業所の名称、所在地、事業概要などの公表
  • 不支給期間が5年に延長され、不支給対象者も拡大(従来は3年)
  • 申請サポートを行なった社会保険労務士等も罰則の対象

「少しくらい大丈夫だろう」「どうせ気付かないだろう」など、軽い気持ちで不正受給をしたがために、支給額の返還やペナルティ金だけでなく、社会的信用を失うなど取り返しのつかない事態になってしまう可能性もあります。

不明な点がある場合には、管轄の労働局や専門家に尋ねるなど、理解した上で申請を行うことが大切です。

まとめ

今回は、約3,900万円もの多額の助成金を不正受給した事件を紹介しました。

私的に使用したわけではありませんが、こういった体制で経営をしなければならないほど逼迫していたことが伺えます。

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