【不正経理事件簿】KDDI子会社で2460億円の架空取引。広告代理事業で循環取引、330億円が流出か

通信大手KDDIの連結子会社である「ビッグローブ」およびその子会社「ジー・プラン」において、巨額の架空取引が発覚しました。

長期間にわたり行われた循環取引による売上高の過大計上額は、最大で2,460億円にのぼると見られています。

親会社のKDDIが、2026年3月期第3四半期決算の発表延期を余儀なくされた今回の事件。

なぜ巨大通信グループでこれほど大規模な不正が9年もの間見過ごされてきたのか。その経緯と手口を整理し、企業が他山の石とすべき教訓を解説します。

事件の経緯

不正が発覚したのは、KDDIの連結子会社であるインターネット接続業者「ビッグローブ」と、その子会社でポイントサイト運営などを手掛ける「ジー・プラン」。

2026年2月6日のKDDIの発表によると、両社の広告代理事業において、2017年度から2025年度までの約9年間にわたり、実体のない架空取引が行われていた疑いが持たれています。

事態が表面化したきっかけは、2025年12月に一部の広告代理店からの入金が遅延したことでした。

また、同年10月の段階で会計監査人から取引の妥当性について指摘を受けていましたが、当時は帳票類が整っていたため不正の発見には至りませんでした。

関与が疑われているのは、ジー・プランの社員2名(ビッグローブ社員を兼務)。

KDDIは事態を重く見て特別調査委員会を設置し、実態解明を進めていますが、影響額の精査が必要なため、予定していた決算発表の延期を決定しました。

手口と数値の詳細

今回の不正の手口は、典型的な「循環取引(Uターン取引)」と見られています。

手口の概要

広告主が実在しないにもかかわらず、複数の広告代理店を介して広告業務の発注と受注を繰り返し、資金を還流させることで架空の売上を計上していました。

具体的には、以下のようなスキームが疑われています。

  1.  架空の広告発注を行う
  2. 複数の代理店を経由させ、取引があたかも実在するように偽装する
  3. 最終的に自社(ジー・プラン側)へ資金を戻し、売上として計上する

判明している数値(2026年2月6日時点)

  • 売上過大計上額:累計 最大約2,460億円
  • 外部流出額:約330億円

取引の過程で、仲介した代理店への手数料などの名目で資金が社外へ流出し、回収不能となっている可能性があります。

期間:2017年度~2025年度(足掛け9年)

直近では月に数百億円規模の資金が行き来していたとの情報もあり、実態のない取引が雪だるま式に膨れ上がっていた様子が窺えます。

なぜ起きたのか

KDDIという大企業のガバナンス下で、なぜこれほどの巨額不正が長期間発覚しなかったのでしょうか。

1. 巧妙な隠蔽と形式的な監査

関与した社員らは、発注書や請求書などの証憑書類を完璧に整えていました。監査においても「書類上の整合性」は取れていたため、実在性の確認(実際に広告が配信されているか等のチェック)まで踏み込めず、発見が遅れた可能性があります。

2. 子会社ガバナンスの死角

親会社から見て孫会社にあたるジー・プランのような小規模な事業体や、専門性の高い広告事業などは、親会社の監視の目が届きにくい「聖域」になりがちです。少数の担当者に権限と情報が集中し、周囲が不正に気づけない(あるいは口出しできない)環境が醸成されていたと考えられます。

3. 売上至上主義のプレッシャー?

動機の解明はこれからですが、一般的に循環取引は、目標達成のプレッシャーから「翌期の売上を前借りする」感覚で手を染め、穴埋めのために取引規模を拡大せざるを得なくなるケースが大半です。

教訓と再発防止策

今回の事件は、書類が整っているだけでは不正を防げないという、監査と内部統制の限界を突きつけました。

実態確認の徹底(実在性テスト)

売上計上の際は、請求書だけでなく「役務提供の証拠」を確認することが不可欠です。広告事業であれば、掲載ログやレポートなど、第三者的な証拠との突合が求められます。

異常値のモニタリング

「特定の取引先との取引が急増している」「利益率が異常に低い(あるいは高い)」「入金と支払のサイクルが不自然」といった兆候を見逃さない仕組み作りが必要です。AIを用いたモニタリングなども有効な手段となります。

「属人化」の解消と外部の目

特定の社員に業務が集中することは不正の温床です。ローテーションの実施や、利害関係のない第三者によるチェックを入れることが重要です。

われわれDFEのような経理アウトソーシングを活用することも、有効な対策の一つです。

社内のしがらみがない外部の専門家が経理実務を担うことで、不正な操作を牽制し、客観的な視点で「数字の違和感」を早期に察知することが可能になります。

まとめ

KDDI子会社での不正規模は?
A. 2017年度からの9年間で、売上高約2,460億円が過大計上、約330億円が社外へ流出した可能性あり
どのような手口だったのか?
A. 実在しない広告主案件をでっち上げ、複数の代理店を介して資金を回す「循環取引」による、架空の売上計上
再発防止のポイントは?
A. 書類確認だけでなく取引の実態を確認すること、子会社管理の強化、そして外部専門家を活用して透明性を高めること

グループ全体の信頼を揺るがしかねない今回に事件。

「うちは大丈夫」と思わず、子会社や関連会社を含めたガバナンス体制を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

バックオフィス業務の透明化・適正化にお悩みの際は、ぜひDFEにご相談ください。


資料請求