ユーキャン新語・流行語大賞2022にもノミネートされ、ビジネス界においてすっかり定着した「リスキリング(re-skilling)」という言葉。
リスキリングとは、「働き方の変化によって、今後新たに発生する業務で役立つスキルや知識を獲得すること(させること)」を指します。
社会のデジタル化に対応するためのDX人材育成は、多くの企業が導入を検討していますが、経理部門も同様です。
今回は経理部門におけるリスキングと成功のポイントを解説します。
経済産業省による提言書には、以下のように記されています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
たとえば、今後、人間に代わってロボットに業務を任せるケースが増えると考えられています。
ロボットが業務をおこなえば、その業務に携わっていた従業員たちは働く場を失ってしまいます。しかしロボットのプログラムを設計する業務や社内システムを管理する業務などといった新たな業務も生まれてくるでしょう。
とはいえ、上記のような業務をこなすためにはスキルの習得が必要となります。
こういった変化する業務に対応するために、新しいスキルや知識を学ぶことがリスキングです。
経理部門は他部門に比べ、システムの複雑化や老朽化や紙媒体での書類管理などが要因となり、デジタル化が遅れています。
人材不足を解消し、システムのブラックボックス化を避けるためにも、リスキリングにより経理部門のデジタル化に対応できる社員の育成が必要です。
経理部門におけるリスキリングを成功させるポイントは、次の4つ。
- 目的・ゴール設定を明確にする
- 社員の自主性を尊重する
- 適したツールやコンテンツの導入
- 削減したコストや工数の活用を検討する
まず会社は、リスキリングの目的やゴールを検討し明確にします。曖昧な目的やゴールでは、従業員のモチベーションが維持されません。リスキリングに取り組みたくなる仕組みづくりや会社の環境は大切です。
そして社員本人の意思も重要。これまで経験がない社員がリスキリングに取り組むと、スキル習得に対するストレスを感じることもあるでしょう。リスキリングを成功のポイントは、社員本人のスキルを習得したいという自主的な意思が重要です。
またツールやコンテンツ選びを間違えるとリスキリングの効果が期待できなくなります。社内の状況に合わせたツールやコンテンツ選びをしましょう。
経理部門は属人化してしまっているケースも少なくありません。そのためコストや工数の分析や活用方法の検討に時間がかかってしまうことも。リスキリングを実施する際は、事前にコストや工数の活用方法を検討しておきましょう。
経費業務においてデジタル化に対応できる人材育成により、電子帳簿保存法への対応や現金小口管理の負担の軽減が可能に。リスキリングで解決できる経費精算には、次のようなものが考えられます。
- 電子帳簿保存法への対応
- 現金小口管理の負担軽減
- 業務の属人化防止
- 人材不足の解消
電子帳簿保存法に対応できると、ペーパーレス化やコスト削減などが実現。ファイリングや処分などの手間を大きく削減できます。
立替精算や現金管理が発生する現金小口管理も、経費精算のキャッシュレス化に対応できる社員が増え、デジタル化が進むことで負担が大幅に軽減。現金小口管理による人的ミスも少なくなるでしょう。
専門知識が必要な経理部門は、業務が属人化してしまうケースも少なくありません。経理担当者以外が経理に必要な知識を習得しておくことは、業務の属人化防止となります。
そしてリスキングにより、新しい業務を既存社員に任せられるようになるため、人材不足も解消できます。新しい業務に対応するために新たに人材を雇用する必要もありません。つまり採用の手間やコストを削減できます。
リスキングを成功させるためにも、既存社員の現状スキルや自社に必要な業務をしっかりと見定めましょう。ここからは導入手順の一例をご紹介します。
- 既存スキルを視覚化する
- 習得すべきスキルを決める
- 教育カリキュラムを選定する
- 学習環境を整備する
- 習得したスキルを活用できる場所を提供する
まずは既存社員が持っているスキルを視覚化します。今後習得すべきスキルや適性のある業務を確認し、それに応じた教育カリキュラムを選定しましょう。
働きながらでも積極的にリスキリングに取り組めるよう、会社側は社員の負担が大きくならない学習環境を整備する必要があります。
新しく取得したスキルを定着させるために、活用できる場所を提供することも必要です。
経理部門に求められるデジタル化。
リスキングによるデジタル化に対応できる人材育成で、電子帳簿保存法への対応や現金小口管理の負担、人材不足などの課題を多く解決できるでしょう。
従業員だけではなく会社全体にとっても、リスキリングに取り組むメリットは大きく、企業の成長につながります。自社に適したリスキリングの目的やゴール、方法を明確にし、前向きに取り組んでいきましょう。