商品やサービスを販売するうえで欠かせない「市場調査」や「マーケティングリサーチ」。
両者は類似の目的を持ちながらも異なる側面を持っています。しかし市場調査とマーケティングリサーチの意味を混同してしまっている方も少なくありません。
「市場調査」は、過去から今のこれまでの商品やサービスを調査する目的で行われますが、「マーケティングリサーチ」は数値やデータから、商品やサービスの未来の市場動向を予測し考察することです。
その違いや性質をしっかり理解することで、より集客や販促に役立てることができるでしょう。
今回は「市場調査」と「マーケティングリサーチ」の違いや調査方法などについて解説します。
市場調査は、顧客のニーズや競合情報、市場動向などを調査・分析するプロセス。過去から現在に至る市場動向を、数値化して把握します。
市場調査は「マーケットリサーチ」とも呼ばれるため、マーケティングリサーチと言葉が似ていることから混同されがちです。
市場調査は、市場(マーケット)の特性やトレンド、消費者のニーズ、競合他社のシェア・動向などの把握し、マーケティング戦略の策定などに役立つ情報を得ることが主な目的。
例えば、新しく”気清浄機”を開発する場合、出荷台数や1世帯あたりの所有台数、1台あたりの販売単価、売れている製品の価格やスペックなど、現状の調査を行います。これが市場調査です。
市場調査にはいくつかの調査方法があります。ここからは代表的な調査方法をご紹介しましょう。
市場調査の最も代表的な方法が「定量調査」です。
既存顧客やターゲット顧客層に対し、対面・郵送・Webなどでアンケートなどを行います。一般的に大規模なサンプルを対象に調査を行い、数値的なデータを収集。数値データから、平均値や標準偏差、相関係数などの統計的指標を計算し、パターンや関係性を分析します。
定性調査は、ターゲットとなる年齢や性別、職業などの対象者に、インタビュー形式などで情報を得る方法です。
アンケートではわかりにくいユーザーの本音や意見など、定性的な情報を得られます。
定量調査の数字では表れない情報を収集でき、新しい”気づき”を与えてもらえる可能性があるのが、定性調査の大きなメリットです。
一般消費者を装って、店舗やサービスの状況を確認するのが「覆面調査」。
普段のサービスや態度、言葉遣いなどを調査する手法で、現場では気づかない部分まで現状把握をし、品質の向上につなげることができる手段です。
「ミステリーショッパー」などとも呼ばれ、ミシュランガイドなどもこの方法。調査レポートをもとに商品やサービスの改善に生かすことができるのが覆面調査といえます。
政府や官公庁などが公開している統計データを調査するのが「デスクリサーチ」。
インターネットなどを用いて信頼性の高いデータが簡単に入手できますが、誰でも利用できるので他社との差別化はできません。
先ほど紹介した市場調査は、マーケティングリサーチの一部。
マーケティングリサーチは、現在に加えて未来の市場動向についても予測や分析を行います。今後の市場やニーズを把握していくには、マーケティングリサーチが必要です。
例えば、「現在持っている空気清浄機の気に入っている点」という質問に対し「デザイン」という回答があった場合、既存の製品よりもさらに優れたデザインの製品を開発すれば、売上につながる可能性が高くなります。集めたデータから顧客ニーズを洗い出すのがマーケティングリサーチ。
マーケティングリサーチにおいても、市場調査同様、定性調査や定量調査などが行われます。また、目的によってテストを行うことも。ここからはマーケティングリサーチの代表的な手法を紹介していきます。
実際に新商品や対象製品をユーザーに使用してもらい、その評価を調査する方法が製品テストです。商品についての印象、改良すべき点などの課題がわかります。
製品容器のデザインや材質、使いやすさなどに関するテストです。パッケージについての評価や、店頭で目立つかどうかなど、ユーザーに意見を集めます。
ネーミングテストは、その商品に合う商品名を、いくつかの候補の中からユーザーに意見を求めるテストです。
試供品を配りしばらく使ってもらい、結果を記録してもらうテストです。製品の実際の使い心地などを聞くことができます。
イベントやキャンペーンの実施前と後で調査し、結果を比較することで、宣伝効果を測る方法です。商品の使用前後における購入意欲の変化を測るためにも用いられ、マーケティング効果や商品の評価を知ることができます。
ユーザーの感想や口コミを集め商品の改善に利用するため、一部の店舗や期間限定で実際に製品を販売するテストです。全国発売と同等の環境にターゲットエリアを置き、宣伝や広告、販促イベントなどを行い反応を確認。この結果に基づき全国発売の対策を練ります。
市場調査やマーケティングリサーチを効果的に行うためのポイントは、次の3つ。
- 調査の目的を明確にする
- 依頼する調査会社は厳選する
- 予算と期限を決めておく
まずは、調査を行う目的を明確にすることが重要です。
ぼんやりとした目的ではなく、どんな課題を達成したいか、そのためには市場調査で何を知りたいかなどを、言語や図で具体的に表記しておきましょう。
調査を行うことが目的ではありません。目的を達成するために調査を用いるのです。
多様な調査方法の中から、目的を達成するための消費者の本音を引き出す調査方法を検討しましょう。
市場調査やマーケティングリサーチを専門に行う業者はたくさんありますが、サービス内容や得意とする調査は異なります。
自社にはどの調査会社が合っているかを見極めなければなりません。複数社に問い合わせや見積もりを取り、調査内容や費用、期間についてなど詳細までしっかり比較して選びましょう。
市場調査やマーケティングリサーチは、ある程度の予算や期限を決めておかないと、どんどん増えてしまいます。依頼する調査会社と相談し相場を見ながら、あらかじめ予算や期限を決めておきましょう。
調査によっては、一回だけの調査で完結するケースや、定期的に調査を行うケースもあります。自社のニーズに合わせることが大切です。
- 市場調査は、顧客のニーズや競合情報、市場動向などを調査・分析するプロセス
- 市場調査で、過去から現在に至る市場動向を数値化して把握する
- マーケティングリサーチは、現在に加えて未来の市場動向についても予測や分析を行う
- マーケティングリサーチで、今後の市場やニーズを把握する
過去の流れや現在までの状況を確認する「市場調査」、今後の流行や展開を予測するための「マーケティングリサーチ」。
さまざまなマーケティング施策によって社内だけでは考えられなかったアイデアが生み出され、ビジネスを成功へと導いてくれるかもしれません。
ただし最終的に結果を活用し利益を生み出すのは企業自身。マーケティング施策を有意義なものにするためには、目的の設定や結果の活用設計が重要です。