【簿記ルール】原材料管理で見落としがちな簿記のルール3選

製造業等において、原材料の管理は利益率や経営効率に直結する重要なポイントです。

しかしその管理には意外と見落とされがちな簿記のルールが存在します。

今回は、原材料管理で注意すべき簿記ルールを3つ解説します。

1. 直接原材料と間接原材料の区別

原材料は大きく「直接原材料」と「間接原材料」に分類されます。

簡単に言うと、直接原材料は製品に直接使用される原材料、間接原材料は製品に直接関連しない原材料の費用です。

直接原材料は製品ごとに計上できるため、製品ごとの原価を正確に把握できますが、間接原材料は製品ごとに特定できないため、製造全体の費用として捉える必要があり、これを正確に分類しておかないと、製品ごとの利益率が不明確になってしまいます。

それぞれの違いを理解しておくことが、正確な原価計算と利益率の把握において非常に重要です。

直接原材料とは?

直接原材料とは、製品を作るために直接使われる原材料のこと。

製品一つひとつに直接関与しているため、その費用は製品ごとに明確に特定できます。

例えば自動車メーカーの場合、タイヤ、エンジン、車体の金属パーツなどが直接原材料に該当します。これらは、製造する自動車一台ごとに使われる量がはっきりとしており、直接的にその製品に結びつきます。

間接原材料とは?

間接原材料は、製品の製造過程で使われるものの、製品そのものには直接組み込まれない、または使用量が製品ごとに明確でない原材料のことです。間接的に製品に関わっており、費用を特定の製品に直接割り当てることが難しいため、通常は製造間接費として処理されます。

例えば自動車メーカーの場合、工場で使用される潤滑油、工場内の清掃用品、または工具などが間接原材料です。これらは自動車製造に不可欠ではありますが、特定の車一台にどれだけ使われたかを明確に割り当てることは難しいため、間接費として処理されます。

2. 製造途中の原材料は「仕掛品」

製造業において、原材料は製品として完成するまでさまざまな段階を経て管理されます。

その過程の中で製造途中にある原材料、つまり製造が開始されたがまだ完成していない製品は「仕掛品」として扱います。

仕掛品の勘定は、製品が完成するまでの製造コストを適切に計上し、在庫管理を正確に行うために重要です。

仕掛品勘定の重要性

仕掛品勘定を使用することは、以下のようなメリットがあります。

  • コスト管理の明確化
  • 財務諸表の正確性
  • 生産計画の見直し

製品が完成するまでにかかる材料費、労務費、経費などを仕掛品勘定でまとめることで、製造コストを正確に把握できるだけでなく、仕掛品を適切に管理することで、期末の棚卸資産の評価が正確になり、財務諸表の信頼性が向上します。

また仕掛品の状況を把握することで、生産効率や生産計画の見直しが可能になり、無駄を省いた効率的な製造体制を構築できるでしょう。

例えば、自動車メーカーがエンジンを組み立てる工程を考えてみましょう。エンジンは、さまざまな部品(シリンダー、ピストン、バルブなど)が組み合わさって完成します。部品が組み立てられている状態で、まだエンジンが完成していない場合、このエンジンは「仕掛品」として扱われます。

このように仕掛品として計上されたコストは、最終的に完成品であるエンジンの原価として認識され、企業の利益計算に影響を与えます。

※仕掛品勘定を使用する原材料は、主要材料となる「直接材料費」のみです

3. 原材料費と「売上原価」の関係性

原材料は製品を作るための基本的な要素ですが、それ自体は売上には結びつきません。

原材料を購入しても、製品が販売されなければ、その費用は「売上原価」として計上されることはありません。

このプロセスを理解することは、企業の利益計算や在庫管理において非常に重要です。

  • 原材料の購入
  • 製品の製造
  • 製品の販売

まず原材料を購入すると、その費用は会計上で「在庫」として計上されます。この段階では、まだ売上には影響を与えません。

次に原材料が製品として組み立てられると、仕掛品勘定を通じて製造コストが計上されます。この時点でも売上は発生しません。

最後に製品が市場で販売されると、その販売価格から原材料を含む製造コストが引かれ、初めて売上原価が計上されます。

このプロセスを経て、企業は実際の利益を算出することができます。

例えば、自動車メーカーがエンジンを製造するために鉄鋼を原材料として購入したとします。この鉄鋼は在庫として計上され、エンジンが完成するまで売上には影響しません。完成した自動車が販売されると、その自動車にかかった原材料費が売上原価として計上され、企業の利益計算に寄与します。

まとめ

原材料の管理は製造業において重要な要素。「直接原材料」と「間接原材料」の理解をはじめ、「仕掛品」として適切に計上し性格なコスト管理を行うことで、在庫管理や生産計画の見直しが可能になるでしょう。

また原材料費は製品販売を通じて初めて「売上原価」として認識されます。

これらの簿記ルールをしっかり押さえ、効果的な原材料管理と利益の最大化を図りましょう。

簿記ルールに不安のある企業様は、ぜひDFEにご相談ください。