【FP&Aとは】導入企業の事例も紹介

企業の財務全般を統括する最高責任者である「CFO」は、企業全体の財務戦略を策定し、その実行を統括する責任を担っています。

しかし、企業の規模が大きくなるにつれて、CFOが全体を詳細に把握することは難しくなるでしょう。

そこで、CFOを支援する役割として注目されているのが「FP&A」。「FP&A」は、CEOを支えるビジネスパートナーです。

今回は「FP&A」について、FP&Aを導入した企業の事例も交えて紹介します。

FP&Aとは

FP&A(Financial Planning and Analysis・ファイナンシャルプランニング&アナリシス)とは、企業の財務計画と分析を担当する部門や機能を指します。

具体的には、予算の作成、財務予測、業績の分析、戦略的な意思決定のサポートなどを行い、企業の経営陣に対して財務データを提供。ビジネスの現状や将来の見通しを把握し、効果的な経営判断を支援する役割を担っています。

財務戦略の策定やリスク管理にも重要な役割を果たすため、海外の企業では、経営の意思決定を支える「FP&A部門」がCFOの指揮のもとで確立されており、企業の成功に不可欠な機能とされています。

FP&Aはどんなことをするのか

FP&Aは、企業が財務的に健全な状態を保ち、長期的な成功を収めるために不可欠な役割を果たします。

主要な業務は次のようなものです。

  1. 予算の策定

年次予算や四半期ごとの予算を作成し、企業全体の資金計画を立てます。このプロセスでは、各部門の計画を統合し、企業の目標と整合させることが求められます。

  1. 財務予測

将来の収益や支出、キャッシュフローの予測を行います。これにより、企業が中長期的な視点で戦略を立てる際の指針を提供します。

  1. 業績分析

実際の業績と予算や予測を比較し、差異の原因を分析します。この分析は、経営陣に対して現状を報告し、必要な修正を行うための基礎となります。

  1. 経営指標のモニタリング

重要な経営指標(KPI)をモニタリングし、企業のパフォーマンスを評価します。これにより、経営陣は迅速かつ効果的に意思決定を行うことができます。

  1. 戦略的意思決定のサポート

財務データに基づいたインサイトを提供し、経営戦略や投資判断を支援します。これには、新規事業の評価やコスト削減の提案なども含まれます。

  1. リスク管理

財務上のリスクを特定し、これに対する対応策を策定します。経済情勢の変化や市場リスクに対するシナリオ分析も行います。

経理・財務との違いは?

FP&Aと経理・財務の違いは、主に役割と焦点にあります。

FP&Aは、企業の財務戦略の策定と実行をサポートする部門で、将来の業績や資金計画を予測し、経営陣に対して戦略的な洞察を提供します。

予算の作成や財務予測、業績分析などを通じて、経営の意思決定をサポート。FP&Aの焦点は未来志向であり、企業の戦略的な計画に貢献することが主な役割です。

経理は、企業の日々の財務取引を記録し、正確な財務諸表を作成する役割を担っています。

経理部門は過去の取引や業績に基づいてデータを処理し、法的な報告義務を遂行。つまり、経理は過去志向であり、会計基準や法的要件に従って財務記録を維持することが主な任務です。

そして財務(ファイナンス)は、企業全体の資金調達や資金運用、キャッシュフローの管理を担当します。

資本構造の最適化や資金調達戦略の策定などを行い、資金の効率的な運用や投資判断を支援。財務の焦点は資金管理にあり、企業の資金調達や運用に関する戦略を策定することが主な役割です。

つまりFP&Aは未来の予測と戦略的意思決定に焦点を当てるのに対し、経理は過去の取引の記録と報告、財務は資金調達や運用に関連する業務を担当しています。それぞれが異なる視点から企業の財務を支えています。

FP&Aを導入している企業事例

新たな仕組みは、それを導入するだけでなく、CFOとFP&Aが立てた戦略に事業部が納得してくれなければなりません。ここからはFP&Aを導入した企業事例を紹介します。

NEC

2020年度にFP&A部門を新たに設置したのが「NEC」。当時CFOであったのが現社長の森田氏です。

もともとビジネスユニット側にあった予算策定の主導権を、コーポレート側が主体となって予算を策定できるよう変革。ビジネスユニットと協議する体制へ整え、その後2023年にビジネスユニットに所属していた事業計画をコーポレート側に移管し、FP&Aを全社的に取り入れました。

当初、現場からは戸惑いの声も聞かれたそうですが、話し合いを繰り返し、徐々に実践できる組織に変革。現在はNEC本体に約500人のFP&Aがいるそうです。

グリー

ゲーム・アニメ事業やメタバース事業などを手掛ける「GREE(グリー)」は、2019年から各事業部に「ビジネスカウンセル」というFP&Aに当たる職種の人材を配置しています。

ビジネスカウンセルの導入を主導したのは、GREEのCFOである大矢氏。

ビジネスカウンセルのメンバーは、以前から社内にいた人材を登用することにもこだわったそう。また「キャリア形成になる」と強調し人材確保をしたのだとか。

「ビジネスカウンセル」の仕組みは、GREEやYahoo!、一部の外資系企業などで取り入れられています。

まとめ

FP&Aは、企業の財務戦略を支援する業務。予算策定や業績分析、リスク管理を通じて、CFOをはじめとした経営陣の意思決定をサポートします。

大企業に限らず、中小企業もFP&Aを導入することで、予算の作成や業績の分析を通じて財務の健全性を確保し、将来の成長戦略を立てる際の明確な指針を得ることができるでしょう。

とはいえ新たな仕組みを導入するだけではうまくいきません。規模に応じた適切なFP&Aの仕組みを取り入れることで、中小企業でも競争力を強化し、持続的な成長を実現することが可能です。