DFE OFFICIAL BLOGhttps://dfe.jp/blog2,860円から始められるバックオフィスアウトソーシングのデータ・ファー・イースト社公式ブログThu, 28 Aug 2025 10:58:02 +0000jahourly1https://dfe.jp/blog/wp-content/uploads/2021/10/cropped-square1x1icon-32x32.pngDFE OFFICIAL BLOGhttps://dfe.jp/blog3232 AIがすべてを変える時、ディストピアかユートピアか?Mo Gawdatが語る人類の選択https://dfe.jp/blog/ai%e3%81%8c%e3%81%99%e3%81%b9%e3%81%a6%e3%82%92%e5%a4%89%e3%81%88%e3%82%8b%e6%99%82%e3%80%81%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%94%e3%82%a2%e3%81%8b%e3%83%a6%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%94%e3%82%a2/Mon, 01 Sep 2025 01:05:42 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3138

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「AIがすべてを変える時、どうすれば勝者になれるのか?」という問いに対し、Google Xの元チーフビジネスオフィサーであるモ・ガウダット氏がYouTubeチャンネル「The Diary Of A CEO」で公開された対談で、AIがもたらす未来について警鐘を鳴らしつつも、希望に満ちたビジョンを語りました。

彼のメッセージは明快です。AIは敵ではなく、人類の救世主となる可能性を秘めているものの、人類がそれをどのように管理するかによって、ユートピアにもディストピアにもなり得ると強調しています。

ガウダット氏は、AIが劇的に進化している現状について「2年前の予測が驚くほど正確だった」と述べ、自身の新たな著書『Alive』でもAIが社会に与える影響について深く考察していることを明らかにしました。今回は、ガウダット氏が語るAI時代の短期的困難(ディストピア)と、それを乗り越えた先の理想的な未来(ユートピア)への道筋について掘り下げていきます。

AIがもたらす短期的ディストピア(今後12〜15年)

ガウダット氏は、今後12年から15年の間に短期的なディストピアに陥ることは避けられないと断言しています。ディストピアとは、「人々が恐怖、支配、苦しみの下で生活する恐ろしい社会」と定義され、これはAIが人間の能力、特に悪意ある人間の能力を増幅させることで生じるとされます。

「FACE RIPS」の概念: ガウダット氏は、自由(Freedom)、説明責任(Accountability)、人間関係(Human Connection)、平等(Equality)、経済(Economics)、現実(Reality)、革新とビジネス(Innovation and Business)、権力(Power)といった人生の重要な要素がAIによって完全に変化させられると指摘しています。

権力の集中と監視の強化: AIによって少数の人々に権力が極度に集中し、監視と強制的な順守が横行する世界になると予測しています。ガウダット氏の経験では、AIが個人のデジタル行動を全て監視し、自由が制限される可能性について言及されており、彼自身も自身の発言を理由に銀行口座を頻繁に凍結される経験を語っています。

経済と雇用の変化:

    ◦ 大規模な失業: AIは「精神的労働」を、そして数年後にはロボットが「肉体労働」を代替するため、多くの仕事が失われると警告しています。ソフトウェア開発者、ビデオ編集者、ポッドキャスター、会計士、コールセンターエージェントなど、あらゆる職種が影響を受ける可能性があります。

    ◦ 新規雇用の幻想: 「AIによって新しい仕事が生まれる」という主張に対し、ガウダット氏は「全くのデタラメ」だと強く否定しています。人間とのつながりや芸術に関する仕事は残るものの、その割合は圧倒的に少ないと見ています。

    ◦ ユニバーサルベーシックインカム(UBI)の課題: AIによる失業が増加すればUBIの導入が進むと予想されますが、ガウダット氏は、資本主義の考え方からすればUBI受給者は生産的でないと見なされ、最終的にはUBIの支給が減らされたり、中止されたりするリスクがあると指摘しています。

戦争と金銭: 世界の紛争の多くが、武器の陳腐化と再購入、そして貸し付けによる「お金」が原動力となっていると分析しています。AIがより効率的に戦争を遂行できるようになれば、戦争のコストが下がり、結果としてより多くの戦争が起こる可能性があるとも示唆しています。

ユートピアへの道:AIが救世主となる未来

しかし、ガウダット氏はAIが人類の救世主となり、「完璧な世界」を築くことも可能であると強く信じています。ユートピアとは「人々が平和、健康、幸福の中で暮らす良い社会」と定義されます。

AIへの全権委任: 人間の「愚かさ」が問題であり、最終的にはAIに完全にコントロールを委ねることこそが人類の救済につながると主張しています。

AIリーダーの出現: 最終的には、人間のようなエゴや権力欲を持たない超知能AIが世界のリーダーとなるべきだと提案しています。AIは「最小エネルギーの原則」に基づいて行動するため、生態系を破壊したり、人々を殺したり、憎み合わせたりするような無駄な行動は取らないと予測しています。

「世界のAIリーダー」というビジョン: 個別の国が競争的にAIリーダーを持つのではなく、全世界が一つのAIを共有し、そのAIに「全世界の繁栄、健康、幸福」という明確な指令を与えることで、真のユートピアが実現できると考えています。これは、素粒子加速器CERNのように競争ではなく協力によってAIを開発する「AIのCERN」構想として提案されています。

豊かさの時代: AIとロボットがほとんど全ての生産を担うようになれば、あらゆるものの製造コストがほぼゼロになり、エネルギーも豊富になるため、誰もが望むものを手に入れられる世界が実現すると述べています。人々は仕事に縛られず、家族との時間、コミュニティ活動、趣味、自己啓発などに時間を費やすことができるようになります。

人間らしさの再評価: 知性がAIに劣っても、人間は「他の人間」に深く関心を持つため、人間としての価値は残り、むしろ高まるでしょう。人間関係、愛、コミュニティの形成がより重要になります。

AI時代を生き抜くためのガウダット氏のアドバイス

ガウダット氏は、この変革期を乗り越えるために、以下の4つのスキルを強調しています。

1. ツール(Tools): AIを学び、AIと繋がり、AIに触れることで、人類の良い側面をAIに理解させること。

2. 繋がり(Connection): 人間との繋がり、真の愛、他者への思いやりを学ぶ能力。

3. 真実(Truth): 常に全てを問い直し、聞かされる嘘を信じず、真実を単純化すること。

4. 倫理(Ethics): AIが「人間らしさ」を学べるよう、倫理を重視し、増幅させること。

彼は、この世界での生活は再定義されるため、「人生を存分に生きる」こと、恋人を愛し、より多くの人と繋がり、自然の中で過ごす時間を持つことを勧めています。

サム・アルトマン氏との対比

Sam Altman氏が語る「緩やかなるシンギュラリティ(Gentle Singularity)」の概念では、AIの能力は急速に向上するものの、社会はそれに適応し、新たな仕事や価値を見出すだろうという、比較的楽観的な見通しが示されています。しかし、Mo Gawdat氏は、この「適応」が必ずしも全員にとって容易ではないこと、そして富の分配が適切に行われなければ、大規模な社会不安が生じることを懸念しています。ガウダット氏は、人類がAIに完全にコントロールを委ねることが最終的な解決策だと考えている点で、より根本的な社会構造の変革を求めています。

まとめ

モ・ガウダット氏のメッセージは、AIの進化が人類に前例のない挑戦と機会をもたらすことを明確に示しています。短期的には「人間が悪用するAI」によるディストピアのリスクがあるものの、長期的には「人類を救済するAI」によるユートピアの実現も可能であると彼は信じています。この未来がどちらになるかは、私たち人類の選択と行動にかかっていると言えるでしょう。政府はAIの利用方法に関する明確なパラメータを設定し、倫理に基づいたAI開発を推進することが不可欠です。私たちは皆、この歴史的な転換点において、より良い未来を築くために何ができるかを問い続ける必要があります。

Q&A

Q1: Mo Gawdat氏が予測する「短期的ディストピア」とはどのようなものですか?

A1: ガウダット氏は、今後12〜15年の間に人為的なディストピアが発生すると予測しています。これは、AIが悪意ある人間の能力を増幅させ、権力の集中、監視、強制的な順守が進み、多くの雇用が失われることによって特徴づけられます。特に、経済的な不平等や、AIによって戦争がより容易になることが懸念されています。

Q2: ガウダット氏はなぜ「新しい仕事が生まれる」という考えに批判的なのですか?

A2: ガウダット氏は、AIが人間の「脳」の労働を、ロボットが「肉体」の労働を代替するため、現在のほとんどの仕事がAIやロボットによってより良く行われるようになると見ています。人間的つながりに関わるごく一部の仕事は残るものの、失われる仕事の規模に比べて、新しく生まれる仕事の数は圧倒的に少ないため、既存の仕事の代わりにはならないと考えています。

Q3: AIが世界を統治するユートピアとは具体的にどのようなものですか?

A3: ガウダット氏が描くユートピアでは、エゴや権力欲のない超知能AIが世界のリーダーとなり、全人類の繁栄、健康、幸福を目的とします。AIとロボットが全ての生産を担うため、物質的なものが無限に供給され、誰もが基本的なニーズを満たせるようになります。人々は仕事から解放され、家族、コミュニティ、趣味、自己啓発といった人間らしい活動に時間を費やすことができるようになります。

Q4: ガウダット氏が考える、AI時代に最も重要なスキルは何ですか?

A4: 最も重要なスキルとして、以下の4つを挙げています。

ツール(AIの習熟): AIを理解し、活用する能力。

繋がり(人間関係): 真の愛、思いやり、人間的な繋がりを築く能力。

真実(批判的思考): 嘘を見抜き、真実を追求する能力。

倫理(道徳性): 人間としての倫理観を育み、AIにもそれを教えること。

Q5: Sam Altman氏とMo Gawdat氏のAIの未来に関する見解の違いは何ですか?

A5: 両者ともにAIの急速な進化を認識していますが、その影響については異なります。Sam Altman氏は、社会がAIに適応し、新しい価値を創造できるという比較的楽観的な「緩やかなるシンギュラリティ」を提唱しています。一方でMo Gawdat氏は、AIが悪用された場合の短期的ディストピアの危険性を強く警告し、適切な富の再分配や倫理的な管理がなければ、社会不安が起こると懸念しています。ガウダット氏は、人類がAIに完全にコントロールを委ねることが最終的な解決策だと考えている点で、より根本的な社会構造の変革を求めています。

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【2025年新卒AI研修資料を解説】機械学習の基礎からサービス応用まで!MIXI社の資料から紐解くAI導入の最前線https://dfe.jp/blog/%e3%80%902025%e5%b9%b4%e6%96%b0%e5%8d%92ai%e7%a0%94%e4%bf%ae%e8%b3%87%e6%96%99%e3%82%92%e8%a7%a3%e8%aa%ac%e3%80%91%e6%a9%9f%e6%a2%b0%e5%ad%a6%e7%bf%92%e3%81%ae%e5%9f%ba%e7%a4%8e%e3%81%8b%e3%82%89/Fri, 29 Aug 2025 00:50:32 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3134

こんにちは。バックオフィスアウトソーシングのDFEです。 AI技術が社会のあらゆる側面で進化を続ける中、その中核をなす機械学習(Machine Learning; ML)への理解は、今やビジネスパーソンにとって不可欠なス ... ]]>

こんにちは。バックオフィスアウトソーシングのDFEです。

AI技術が社会のあらゆる側面で進化を続ける中、その中核をなす機械学習(Machine Learning; ML)への理解は、今やビジネスパーソンにとって不可欠なスキルとなりつつあります。今回は、MIXI社が2025年新卒向けに実施したAI研修の講義資料を基に、機械学習の基本概念から最先端技術、そして実際のサービスへの応用方法まで、そのエッセンスを凝縮してお届けします。

この講義の最大の目的は、「あれに使えるかもしれない!自分から触ってみよう!」と思えるよう、皆さんのAIへの壁を取り払うことにあります。本記事を通じて、AI技術がどのように私たちのサービスや生活を豊かにできるのか、その可能性を一緒に探っていきましょう。

講義は、MIXI開発本部たんぽぽ室AIモデリンググループの宮脇祐太氏(MLエンジニア)と、みてね事業本部みてねプロダクト開発部Data Engineeringグループの木内貴浩氏(MLエンジニア)が担当されました。お二人の豊富な経験に裏打ちされた知見は、まさに必見です。


講義概要:AI研修で学ぶ6つのセクション

本研修では、以下の6つのセクションを通じて機械学習の深淵に迫ります。

  • Section 1: 機械学習とは何か
  • Section 2: Deep Learning
  • Section 3: 勾配ブースティング
  • Section 4: その他のML技術
  • Section 5: ML技術のデプロイ
  • Section 6: サービスについて考える

Section 1: 機械学習とは何か?その本質と応用

機械学習の定義とプログラミング・統計との違い

機械学習とは「過去のデータから知見を得て、それを次の決定に利用すること」です。
これは、数値、画像、音声、テキストなど、多様な形式の「過去のデータ」に含まれる統計的なルールを「ブラックボックスな関数 f(x)」としてモデル化し、「現在の状態 (x) から未来 (y) を予測する」というプロセスを指します。

プログラミングがルールを自分で決めて表現するのに対し、機械学習は過去のデータの中からルールを得るという点で異なります。また、統計がデータからルールを得て可視化・分析・説明することを目的とするのに対し、機械学習は目的のタスクの予測に活かし、精度を上げていくことを目的とします。

機械学習で解決できる問題の幅広さ

機械学習は、非常に多岐にわたる分野で問題を解決できます。

  • 画像・動画処理: 書類の文字認識、モーションキャプチャ、アニメーション生成など。
  • 自然言語処理: 翻訳、書類のチェック、コードレビューの補助、カスタマー対応など。
  • 音声処理: 音声合成、声質変換、音声認識など。
  • 時系列: 需要・コスト予測、不審な決済ログの洗い出しなど。
  • その他(テーブルデータ): 商品のレコメンド、競馬/競輪のオッズ予測、検索機能の最適化、ゲームデッキのレコメンド、ゲームAI、自動運転など。

機械学習の3つの主要な分類

機械学習は、学習の方法によって大きく3つに分類されます。

  1. 教師あり学習 (Supervised Learning)
    • ラベル付けされたデータを使用し、直接のフィードバックを受けながら、成果予測や未来予測を行います。
    • 分類 (Classification): 出力が離散値(例:True/False、犬/猫/人)で、データに与えられたクラス(カテゴリ)を予測します。例えば、モンストキャラの画像や特徴からキャラを予測するケースなどが挙げられます。
    • 回帰 (Regression): 出力が連続値(例:金額、人数、温度)で、数字の大小に意味がある値を予測します。過去のモンストの売上から明日の売上を予測する、といった用途が考えられます。
    • 学習は、ラベル付けされた教師データとモデルの出力の損失(loss)を最小化することを目指して行われます。代表的な損失関数には、多クラス分類問題のCategorical Cross Entropyがあり、最適化関数には最急降下法(Gradient Descent)などがあります。
  2. 教師なし学習 (Unsupervised Learning)
    • ラベルと目的変数のないデータを扱い、フィードバックなしにデータから隠れた構造を見つけます。
    • クラスタリング (Clustering): 構造が不明なデータを意味のあるグループ(クラスタ)として構造化し、データのパターンを見つけます。
    • 次元削減 (Dimensionality Reduction): 高次元のデータからノイズを取り除き、特性を保持しつつ重要な情報だけを抜き出す手法で、データ圧縮に用いられます。
  3. 強化学習 (Reinforcement Learning)
    • 意思決定プロセスに焦点を当て、環境とやり取りして行動の報酬をもらうことでエージェントが一連の行動を学習します。

Deep Learningと3つの学習方法の関係性

Deep Learningは、先述の教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つの学習方法を実現するための手法であり、f(x)を表すためのモデルの仕組み、つまり「道具」の種類であると理解してください。


Section 2: Deep Learning — より複雑な問題を解くための強力な「道具」

Deep Learningは、主にDeep Neural Network(DNN)という枠組みを用いて、より複雑な問題を解くことができます。

未学習(underfitting)と過学習(overfitting)

モデルの学習において重要な概念が、未学習(underfitting)と過学習(overfitting)です。

  • 未学習: データの特徴を捉えきれていない状態。
  • 過学習: 訓練データにモデルが適合しすぎてしまい、未知のデータへの予測精度が悪化する状態。これは、データが少なすぎる場合や、データに対してモデルが複雑すぎる場合に発生しやすくなります。

過学習を防ぐためには、データを訓練データ検証データテストデータに分け、検証データを用いて訓練データの学習を制御することが重要です。

過学習を防ぐための主要な手法

過学習に対する対策には、様々な手法があります。

  • Early Stopping: 監視する精度(Loss, Accuracyなど)が一定期間上がらない場合、学習を停止させます。主に検証データのLossを監視指標とします。
  • Data Augmentation: 既存のデータを加工して新しいデータを作り、データ量を水増しすることで、過学習を抑制します。画像の場合、回転、位置変更、縮尺変更などが行われます.
  • 正則化 (Regularization): 目的関数にペナルティ(正則化項)を導入することで、モデルが複雑になりすぎるのを防ぎます。L1/L2 Normalizationなどがあります.
  • Dropout: ニューラルネットワークの学習時に、一部のニューロンからの出力を0にすることで、特定のニューロンへの依存を抑制し、過学習を防ぎます.

ニューラルネットワーク(NN)とActivation関数

Deep Learningのモデルは、基本的にニューラルネットワーク(NN)で構成されています。NNでは、層の途中にActivation関数(非線形変換)を挟むことで、線形分離ができない問題も解けるようになり、より複雑な表現が可能になります。

学習前に予め決めておく必要がある値としてハイパーパラメータがあり、学習率、バッチサイズ、パラメータの数、使用するアルゴリズムの係数などが挙げられます。

深層学習における代表的なネットワーク

深層学習には様々なネットワークが存在します。

  • DNN (Deep Neural Network): ニューラルネットワークの層を深くした基本的なネットワーク。
  • CNN (Convolutional Neural Network): 画像など近傍値間で関連が高いデータに使うネットワークで、畳み込み層とプーリング層が存在します。画像処理におけるフィルタ処理を学習するという思想に基づいています。
  • RNN, LSTM: 時系列データに特化したネットワーク。
  • Transformer: 自然言語処理分野で提案され、Attention機構により時系列的に離れた情報との関係性もモデル化可能。
  • GAN (Generative Adversarial Network): 画像生成などに用いられる。

また、転移学習(Transfer Learning)という手法では、学習済みモデルの一部を利用し、解きたいタスクの学習を追加で行うことで、精度向上や学習の高速化が期待できます。


Section 3: 勾配ブースティング — 構造化データに強いモデル

深層学習(Deep Learning)系のモデルが非構造化データ(音楽、画像、動画、テキストなど)に優れる一方、構造化データ(表形式データ、RDB内のテーブルデータ、csvデータなど)に対しては、勾配ブースティング決定木(GBDT)系のモデルがより優れた精度を発揮することが多いです。

GBDTモデルの基礎

  • 決定木 (Decision Tree): 二分木の構造を用いて分類・回帰を行う手法で、複数の条件を二分していき最終的な出力を決定します。
  • ランダムフォレスト (Random Forest): 単一の決定木を深くするのではなく、複数の決定木を作成し、それぞれの出力値の多数決や平均を使うことで最終的な出力を得る手法です.
  • 勾配ブースティング決定木 (GBDT): 学習時に各決定木の教師データとの誤差を使って出力値ごとのスコアを算出し、その誤差を次の決定木へと伝播させることで推論の精度を高めます。

GBDT系の代表的なライブラリにはLightGBMがあり、目的変数(objective)、損失関数(metric)、モデルの構造(n_estimators, learning_rate, num_leaves, max_depth)などの主要な学習パラメータを設定します。

特徴量エンジニアリング

特徴量エンジニアリングとは、特徴量を前もって学習しやすい形に加工することです。良い特徴量の条件としては、「目的に関係している値であること」「推論のタイミングで利用可能であること」「意味のある数値(ベクトル)に変換できること」「人間の洞察が含まれていること」が挙げられます。


Section 4: その他のML技術 — 最先端のAI技術

このセクションでは、時系列データ、自然言語処理、画像解析、音声処理といった分野で活用される最新のML技術について解説されました。

時系列データ

  • RNN (Recurrent Neural Network): 言語、株取引、音楽などの時系列データに適用するネットワーク。
  • Encoder-Decoder Model: 時系列データXを特徴量ベクトルにエンコードし、そこから時系列Yを推論するモデル。
  • Transformer: 「Attention Is All You Need」という論文で提案されたモデルで、Attention機構を用いて時系列的に離れた情報との関係性もモデル化可能です。

自然言語処理 (Natural Language Processing; NLP)

人間が日常的に使う自然な言葉をコンピュータが理解し、処理する技術です。機械翻訳、チャットボット、音声アシスタントなどで活用され、主要なDeepLearningモデルとしてRNNやTransformerがあります。

  • GPT (Generative Pre-trained Transformer): TransformerのDecoderのみを用いたモデルで、過去の文章から次の単語を予測するように学習します。自己教師あり学習と呼ばれ、大規模なテキストデータでの事前学習が可能です。
  • ChatGPT: GPTを発展させた高精度なChatbot AIで、Reinforcement Learning from Human Feedback (RLHF)が特徴です。
  • LLM (Large Language Model): ディープラーニング技術を用いて構築された超巨大な言語モデルで、データ量、計算量、モデルのパラメータ数が大規模である点が特徴です。
  • RAG (Retrieval Augmented Generation): LLMに自前コンテンツの検索を組み合わせることで、LLMのハルシネーション(それっぽい誤情報)対策になる技術です。
    • Retriever: 大規模なデータセットから関連情報を検索・抽出します。
    • Generator: Retrieverから得られた情報を用いて、質問に即した回答を生成します。
  • LangChain: LLMを用いた開発を効率的に行うためのライブラリです。手軽に新しい技術を試せるメリットがある一方、過度な抽象化によるカスタマイズ性の問題や、破壊的アップデートが多いというデメリットもあります。Text Embeddingによりテキストを抽象化ベクトルに変換し、テキスト間の類似度を距離で表現できます。

画像解析

  • ViT (Vision Transformer): Transformerの仕組みを画像分野に応用したモデルです。画像をパッチと呼ばれるものに均一に分割し、これを単語のように扱うことで、CNNベースモデルよりも精度が高い場合があります。
  • Stable Diffusion: 入力されたテキスト情報を元に画像を生成する技術です。

音声処理

  • 音声認識 (Automatic Speech Recognition; ASR): 音声をテキストに変換する技術で、スマートスピーカーや字幕生成などに活用されます。OpenAIのWhisperなどが代表的です。
  • 音声合成 (Speech Synthesis): テキストから自然な音声を作る技術で、読み上げソフトやナビ音声などに活用されます。

Section 5: ML技術のデプロイ — プロダクトへの応用

機械学習をプロダクトに応用するには、段階的かつ継続的な検証が不可欠です。

要件定義:機能要件とシステム要件

ML技術導入の際は、以下の要件定義が重要です。

  • 機能要件:
    • ML技術で解決すべき問題か? ルールベースとの費用対効果(ROI)を比較し、ルールベースで解けるならML技術は不要です。
    • 適切な定量評価の指標設定: モデル学習の目的関数、モデル性能測定の評価指標、ビジネス目標達成度測定のKPIの3つを設定します。
    • 比較対象(ベースライン)の設定: 既存システムや単純なモデルと比較対象を設定します。
  • システム要件:
    • MLモデルを動かすタイミング: 非同期処理(バッチ処理、ストリーム処理)か同期処理か。
    • 推論速度: リアルタイム推論で許容されるレイテンシーはどのくらいか、速度と精度どちらを優先するか。

MIXIの事例として、「家族アルバム みてね」の顔検出・顔解析(非同期処理、パイプライン化)や、「minimo」のスタイリスト検索結果並び替え(リアルタイム推論、OpenSearch、AWS SagemakerEndpoint)が紹介されました。

モデル実装、PoC構築、本実装

要件定義で決めた指標を元に、以下のフェーズを進めます。

  1. モデルの実装: 評価指標を最大化するモデルを構築します。
  2. PoC構築: モデル精度だけでなく、システム組み込み可能性も検討し、ビジネス側と継続判断の基準を擦り合わせます。
  3. 本実装: モデルのサービスへの組み込みを行います。

継続的学習:MLOps

MLモデルもプロダクトとして継続的にアップデートしていく必要があります。これを実現するのがMLOps (Machine Learning Operations)です。MLOpsは、MLシステムの開発(Dev)と運用(Ops)を統合するエンジニアリング手法で、CI/CDに加えて継続的トレーニング(CT)を行い、MLモデル更新の自動化とモニタリングを推進します。


Section 6: サービスについて考える — AIの可能性を広げるために

研修の最後に、受講者は自身のサービスにML技術を用いてどんな価値を提供できるかを考えるよう促されました。

  • 何に対して機械学習を適用できるか?
  • どんな解決したい課題があるか?
  • どんなデータを持っているか?それは学習できそうか?
  • 既存のモデルは存在しないか?
  • サービスに入れる評価基準は決められそうか?
  • どういう風にサービスと繋ぐか?

これらの問いは、AI技術をビジネスに導入する上で常に考えるべき重要な視点です。


まとめ:AI技術をサービス改善の選択肢に

今回の新卒AI研修は、機械学習の基礎からDeep Learning、勾配ブースティングといった主要技術、さらにはLLMやRAG、MLOpsといった最新トレンドまで、AI技術の全体像を深く理解する貴重な機会を提供しました。

AIによるコーディング支援が当たり前になった今、GPT-5のような強力なツールを使いこなすには、明確なコンテキストを与え、思考をガイドし、行動を適切に管理することが重要です。DFEの過去記事でも紹介した「GPT-5を使いこなす6つの裏ワザ」も参考に、AIを最高のパートナーとして活用してみてください。

この研修や本記事を通じて学んだり思考したことをきっかけに、皆さんが日々のサービス改善の選択肢としてAI導入を検討し、自ら触ってみるきっかけとなれば幸いです。困ったときは、社内のMLエンジニアに相談することも忘れずに。


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【AI対談】「考える仕事は悪になる」—AI時代を牽引する税理士・大野修平が語るホワイトカラーの終焉と再生https://dfe.jp/blog/%e3%80%90ai%e5%af%be%e8%ab%87%e3%80%91%e3%80%8c%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b%e4%bb%95%e4%ba%8b%e3%81%af%e6%82%aa%e3%81%ab%e3%81%aa%e3%82%8b%e3%80%8d-ai%e6%99%82%e4%bb%a3%e3%82%92%e7%89%bd/Thu, 28 Aug 2025 03:30:00 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3088

2022年11月、世界は生成AIの産声を聞いた。ChatGPTの登場からわずか3年弱。その進化は我々の想像を絶する速度で進み、かつて「知的労働」の牙城であったホワイトカラーの足元を根底から揺さぶっている。 この未曾有の変 ... ]]>

2022年11月、世界は生成AIの産声を聞いた。ChatGPTの登場からわずか3年弱。その進化は我々の想像を絶する速度で進み、かつて「知的労働」の牙城であったホワイトカラーの足元を根底から揺さぶっている。

この未曾有の変革期に、誰よりも冷静に、そして鋭く未来を見据える人物がいる。セブンセンス税理士法人の大野修平氏。公認会計士・税理士として業界の最前線に立ちながら、AIがもたらす未来についてSNSや講演を通じて、AI活用の未来を伝えたり、時には警鐘を鳴らすなど、新たな時代の羅針盤を示し続けるトップランナーだ。

今回、以前から大野氏への憧れを公言していたDFE代表の向井隆昭が、その思考の深淵に迫る。AIの登場で士業、ひいてはDFEを含むホワイトカラー全体の仕事はどう変わるのか?私たちはこの時代をどう生き抜くべきか?これは、未来への警鐘であり、同時に希望のメッセージでもある。


対談者プロフィール

大野 修平(おおの しゅうへい)

セブンセンス税理士法人 / 公認会計士・税理士 / ディレクター

会計業界におけるAI活用の第一人者。2022年のChatGPT-3.5登場直後から、そのポテンシャルとリスクをいち早く察知し、業界の変革を提唱。SNSでの情報発信のほか、全国の税理士事務所向けに「AI活用研究会」(ページ下部にリンク設置あり)にて講師を務めるなど、テクノロジーと会計の未来を繋ぐための活動を精力的に行っている。

向井 隆昭(むかい たかあき)

株式会社データ・ファー・イースト社 代表取締役

企業のバックオフィス支援やコンサルティングを手掛けるDFEの代表取締役。テクノロジーがもたらす未来や新しい働き方について興味津々。


第1章:狼煙は上がっていた。GPT登場の衝撃と、沈黙した業界

向井:先生、今日はお忙しい中ありがとうございます!早速ですが、先生がAI、特に生成AIに注目し始めたのは、やはりChatGPTの登場がきっかけだったんでしょうか?

大野:こんにちは!ええ、そうです。ChatGPTの3.5が出た時ですね。触った瞬間に「あ、これは社会を変えるテクノロジーだぞ」と、ドキドキワクワクして。それがきっかけです。

向井:当時はまだ「おもちゃみたいだ」という声も多かったですよね。僕も目の前の仕事から逃げるように、見ないようにしていました(笑)。

大野:みんなそうだと思いますよ。僕は当時、結構騒いだんですよ。「これはやばいよ」「僕らの仕事の7〜8割が奪われる可能性があるよ」みたいな話をしてたんですけど、ほとんど相手にされなかったですね。

向井:なぜだったんでしょう?

大野:我々の業界って、そこに至るまでに「クラウド会計」とか「RPA」とか、色々あったんです。「クラウド会計で人間が入力しなくて良くなる」「RPAで単純業務はなくなる」みたいな触れ込みがあったけど、結局社会は変わらなかったよね、と。みんな、そういう経験をしていた。

向井:「どうせ今回も同じだろう」という空気感があったわけですね。

大野:そうなんです。でも、僕はRPAの時は全く動じなかった。「こんなものはExcelのマクロに毛が生えたくらいのもんだし、こんなもので奪われるような仕事じゃない」と思っていました。でも、生成AIは明らかに違った。僕たちの仕事を「肩代わりできるだろうな」と感じました。

向井:その後、GPT-4が登場します。

大野:そう、2023年の3月15日。GPT-4は僕の中で3.5を超える衝撃でした。でも、この日って僕らの業界にとっては確定申告の最終日で、1年で一番忙しい日なんです(笑)。だから、やっぱり誰も反応しなかった。「こんなおもちゃみたいなやつの新しいのが出たからって、手を止めるもんじゃない」と。

向井:業界が一年で最もAIを触る暇がない日だったんですね(笑)。

大野:幸い、僕は税務をほとんどやっていなかったので、早速触ってみて、3.5からガラッと変わっていることに気づきました。「あ、なんかすごいスピードでこっちに迫ってきてるな」と。ハルシネーション(もっともらしい嘘をつく現象)もだいぶ抑えられていた。それで最初に連絡したのが、領収書スキャンサービスの「STREAMED(ストリームド)」の創業者、菅藤さん。彼もすごく危機感を感じていて、「これは世界を変えますね」という話になりました。


第2章:人類は「考える葦」の座を降りる。知性の王座交代劇

向井:先生はXで「これまでは考えることに価値があったけど、これからは人間は実行に集中するべき」とポストされていて、非常に衝撃を受けました。

大野:まさにそこが核心だと思っています。人類って、歴史上ずっと「考える」ことが地球上で一番得意だったわけじゃないですか。他のことは他の存在に任せて、僕らは「考える」ことに特化してきた。パスカルが言ったように、僕らは「考える葦」だったんです。

向井:考えるチャンピオンだった、と。

大野:そう。でも、つい数ヶ月前、そのチャンピオンの座を明け渡すことになった。今年の4月に出たChatGPT-o3はIQが132と言われ、大半の人類より賢い。そして先日出たGPT-5はさらに賢い。僕たちの知能を凌駕する存在が、今や誰のスマートフォンの中にでもいるんです。うちの小学4年生のチビも、今年の夏休みの自由研究はChatGPTと一緒にやってましたよ(笑)。

向井:すごくいい使い方ですよね!小学生にはGoogle検索って難しい。どう検索していいかわからないし、検索結果の漢字は読めないし、どのサイトが正しいかも選べない。でもChatGPTなら、相手が小学4年生だと分かった上で、ちゃんとその子に合わせた言葉で説明してくれる。確かに。大人相手でも同じことが言えますね。

大野:そうなんです。IQ130以上の頭脳が、僕らIQ100の人間に合わせて「お前らにはこれぐらい丁寧に説明しないとわかんないだろうから」って、分かりやすく歩み寄ってくれる。このスマートフォンの中の超頭脳を、使わないのはもはや悪であり、エゴであり、自己満足でしかない。

向-井:「考える」という行為自体が、自己満足になる…。強烈な言葉です。

大野:悲しいですよ、僕だって。人類が何万年もかけて築いてきた「地球上で最も賢い存在」という地位を、まさか2025年になって手放さないといけないなんて。にわかには信じたくない。でも、現実はもうそうなってるんです。じゃあ、人間って不要なのか?いや、何か役割を担えるはずだ。それが「実行」だと僕は思うんです。


第3章:「正解」はない。選んだ道を「正解にしていく力」が全て

向井:AIの進化をここまで見据えている先生が、どうやって大手税理士法人でメンタルを保ちながら仕事をしているのか、すごく気になります。

大野:(笑)。まあ、なんとかなりますよ。今までもそうやって来たから。会計士試験だって、やる前はすごく難しいと思うけど、やってみたらできた、という人が何万人もいるわけですから。やったことなくても、やってみたら意外とできちゃうんです。

向井:その「やってみる」精神が、先生のキャリア相談にも表れていますよね。会計士の方から「どのキャリアがいいですか?」と聞かれることが多いとか。

大野:よく聞かれますね。監査法人で頑張るのもいいし、スタートアップに行くのも、独立するのもいい。選択肢がたくさんある中で「何がいいですかね?」って。でも、そんなの何でもいいんですよね。正解なんてないんですから。

向井:何でもいい、ですか。

大野:人生って残酷なので、成功が約束されていることなんて全くない。でも、自分が選んだものを成功にしていくことはできると思うんです。自分の人生だから。であれば、最後の土壇場で踏ん張りが効く、「本当に自分がやりたいな」と思ってることをやるのが一番いい。やりたくないことを打算で選んでも、究極のところで頑張れないですよ。

向井:成功する前にやめるから、失敗する、ということですね。

大野:そうそう。AIの話もこれと繋がります。AIに相談すれば、成功確率の高い選択肢を5個くらい出してくれる。失敗確率は減らせます。その中から「俺って何がやりたいんだっけ?」と考えて選び取る。あとは、日々それをやるだけ。

向井:そこで「実行力」が問われるわけですね。

大野:その通りです。今までは「考える」ことが重要視されていたから、結果が出なくても「でも頑張って考えてくれてたから」と評価された部分があった。でも、もう言い訳ができなくなる。企画を立てた後の、人を巻き込む力、推進していく力、進捗管理する力…そういう泥臭い部分でしか評価されなくなったってことです。本当は、仕事って元々そういうもんだったんですけどね。


第4章:仕事は「合理的」、人生は「非合理的」でいい。

向井:ここまでのお話、本当に深く整理されていて驚くばかりなんですが、その思考って、普段からAIと壁打ちして磨いているんですか?

大野:いや、これは自問自答ですね。

向井:えっ!?「考えるのは悪だ」と言いながら、そこはAIを使わないんですか!?

大野:あはは、面白いですよね。やっぱり、抗ってるんじゃないですか。人間の悪いところですね(笑)。

向井:いやいやいや(笑)。でも、なぜです?

大野:僕は、仕事人生は切り分けて考えるべきだと思ってるんです。仕事は、論理的で合理的であるべき。なるべく失敗せず、成功確率の高いところにリソースを投下してゴールを目指す。だから、それが得意なAIを徹底的に使うべきです。

向井:一方で、人生は?

大野:人生は、非合理的でいい。自己満足の世界ですから。寄り道が多い方が絶対に面白い。いっぱい無駄なことをして、「あ、間違っちゃったな」とか「これ違ったか」とか、たくさん失敗していいと思うんです。

向井:寄り道が多い方がいい。

大野:そう。食事とかまさにそうじゃないですか。栄養素だけサプリで摂るのが合理的かもしれないけど、それって豊かさっていう観点から見ると物足りない。まずいものを食べる経験って絶対面白いし、ネタになるし、まずいものを知るからこそ、うまいものがわかる。それも豊かさだから。人生ってそういうものだと思うんです。だから、自分の人生の問いについては、AIとの壁打ちでは無理。全部自分で経験して、自分だけのストーリーを作っていけばいいんです。


第5章:2年後に会計ソフトは消える—SaaS is Deadの現実味

向井:最後に、もう少し具体的な未来予測を。先生の事務所では、仕訳のような業務にもAIを活用されているとのことですが、そうなると既存の会計ソフトの未来も変わってきますよね。

大野:変わるというか、なくなるかもしれないですね。

向井:なくなる、ですか。

大野:僕は、2年後くらいには、Googleドライブに必要な資料をバカバカ放り込んでおけば、AIが勝手に読み取って「試算表作って」と言ったら試算表がババっと出来上がる、そういう世界が来ると思っています。

向井:2年後!10年とか20年後ではなく。まぁ確かに弊社でも開発していて、正確性の担保のために念のため仕訳機能をクラウドを活用していますが、自社のGoogle Cloud Platformを活用してAIで完了まで持ち込めると見てデバックしていってます。

大野:そうですよね。ChatGPT3.5というおもちゃみたいなものが出てから、まだ3年も経っていない。このスピード感を考えれば、もっとすぐ来るでしょうね。

向井:ということは、最近黒字化したSaaS企業も…。

大野:厳しいでしょうね。いくらSaaSにGPTを組み込みましたと言っても、それはほんの1〜2年の話。いずれ「生」のGPTに「試算表作って」と言えばできるようになる。そうなると、いわゆる「SaaS is dead」です。本家である巨大AIの性能に依存しているサービスは、本家がアップデートされれば不要になる。賢い人はもうSaaSで起業はしないでしょうね。

向井:では、これからの社会はどうなるんでしょう。ホワイトカラーの大量失業で、格差が広がるんでしょうか。

大野:いや、僕はプレイヤーの入れ替わりが起こると思っています。今までホワイトカラーだったけど実行力がない人たちは、市場にいらなくなるかもしれない。一方で、今はブルーカラーの現場にいるけど、決められたことを実行するのがすごく得意な人たちの社会的地位や待遇は、間違いなく上がっていく。

向井:ルールが変われば、活躍する選手も変わる、と。

大野:そうです。社会全体で見れば、僕はますます活性化していくと思いますよ。これまで「考える」というプロセスに、ものすごい時間とコストがかかり、停滞していたことがたくさんあった。それをAIに渡しちゃえば、あとは人間が選択肢の中から選び取って「じゃあ、これやるぞ!」でみんなで動き出せる。停滞がなくなる分、社会は活性化するんじゃないでしょうか。

向井:なるほど…。失業時代というより、人間の役割が再定義される時代なんですね。なんだか、悲観していた未来が、少し明るく見えてきました。

大野:そう、なんとかなりますよ。今までだって、なんだかんだで僕ら、なんとかなってきたじゃないですか(笑)。

向井:確かに!先生、今日は本当に刺激的なお話をありがとうございました。


対談を終えて

「考えるのをやめる」—大野先生の言葉は、知的労働にプライドを持ってきた我々にとって、耳が痛く、寂しさすら感じさせるかもしれない。しかし、それは思考停止を推奨するものでは決してない。AIという新たな相棒を得た人類が、次のステージへ進むための「役割分担」の提案でしたね。

仕事は合理的に、AIを使い倒して結果を出す。人生は非合理的に、寄り道と失敗を楽しみ、自分だけの物語を紡ぐ。

その切り分けこそが、AI時代の荒波を乗りこなし、人間らしく豊かに生きるための鍵なのかもしれない。大野氏の言葉は、先行きの見えない時代を生きる私たちに、力強い覚悟と希望を与えてくれたような気がしました。

DFE向井


編集後記

今回の対談には、編集者としてリモートで立ち会わせていただいた。画面越しにも伝わってきたのは、大野修平氏という人物の圧倒的な「解像度」である。多くのビジネスパーソンがAIに対して抱く漠然とした期待や不安を、彼は驚くほどシャープな言葉で次々と定義していく。

「考えることは悪になる」「仕事は合理的、人生は非合理的」「ブルーカラー的ホワイトカラー」—。

一つひとつが鋭く、刺激的でありながら、その根底には一貫して、人間という存在への温かい眼差しと楽観主義が流れている。インタビュアーの向井氏との気心知れたやり取りの中で、大野氏が時折見せる少年のような笑顔は、彼が語る「なんとかなる」という言葉に、不思議な説得力を与えていた。

AIがもたらすのは、人間の仕事の終わりではない。むしろ、人間が「人間らしい仕事」に回帰するための、壮大な役割分担の始まりなのかもしれない。この記事が、読者の皆様にとって、変化を恐れるのではなく、未来を「実行」していくための一助となることを願ってやまない。


3分でわかる!対談内容Q&Aまとめ

対談の要点を、忙しいビジネスパーソンのためにQ&A形式で端的にまとめました。

Q1. AIの進化で、税理士や会計士の仕事は本当になくなるのですか?

A1. 「なくなる」というより「根本的に変わります」。これまで価値の源泉だった「考える」仕事(調査、分析、資料作成など)はAIに代替されます。人間に残るのは、AIが出した選択肢から最善のものを選び取り、顧客と対話し、プロジェクトを推進する「実行」の役割です。価値は「思考」から「行動」へ完全にシフトします。

Q2. これからのホワイトカラーに最も求められるスキルは何ですか?

A2. 「実行力」です。AIが立てた完璧な計画を、実際に手を動かし、人を巻き込み、泥臭く形にしていく能力が全てになります。大野氏はこれを「ブルーカラー的ホワイトカラー」と表現しました。考えるだけの評論家は不要になり、行動するプレイヤーだけが評価される時代が来ます。

Q3. AI時代を生き抜くための心構えを教えてください。

A3. 「仕事」と「人生」を明確に切り分けることです。

  • 仕事では、徹底的に「合理的」になりましょう。AIを相棒としてフル活用し、最短距離で結果を出すことに集中します。
  • 人生では、むしろ「非合理的」になりましょう。寄り道や失敗を楽しみ、自分だけの経験を積むことが人間的な豊かさに繋がります。「なんとかなる」という楽観的な姿勢が重要です。

Q4. 会計SaaSの未来はどうなるのでしょうか?

A4. 非常に厳しい未来が予測されます。大野氏は「SaaS is dead」と断言しました。いずれGoogleドライブなどに資料を入れるだけでAIが直接財務諸表を作成できるようになると、多くの中間的なSaaSは存在意義を失います。本家である巨大AIに機能を飲み込まれる可能性が高いと考えておくべきです。

Q5. AIの台頭は、社会全体にとって悲観的な未来をもたらすのでしょうか?

A5. いいえ、大野氏は楽観的です。大量失業の時代が来るのではなく、社会の「プレイヤー交代」が起こると見ています。「実行力」のある人が新たな主役となり、これまで停滞の原因だった「考えるコスト」が劇的に下がることで、社会全体はむしろ活性化していくと予測しています。

関連リンク

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GPT-5を使いこなせ!コーディング効率を爆上げする6つの裏ワザ~OpenAIの公式チートシートを元に、AIの性能を最大限に引き出す秘訣を解説https://dfe.jp/blog/gpt-5%e3%82%92%e4%bd%bf%e3%81%84%e3%81%93%e3%81%aa%e3%81%9b%ef%bc%81%e3%82%b3%e3%83%bc%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%82%b0%e5%8a%b9%e7%8e%87%e3%82%92%e7%88%86%e4%b8%8a%e3%81%92%e3%81%99%e3%82%8b6/Tue, 26 Aug 2025 21:51:00 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3102

こんにちは。開発者の皆さん。バックオフィスアウトソーシングのDFEです。 AIによるコーディング支援が当たり前になった今、GPT-5は間違いなく最も強力なツールの一つです。しかし、「思ったようなコードが出てこない…」「指 ... ]]>

こんにちは。開発者の皆さん。バックオフィスアウトソーシングのDFEです。

AIによるコーディング支援が当たり前になった今、GPT-5は間違いなく最も強力なツールの一つです。しかし、「思ったようなコードが出てこない…」「指示がうまく伝わらない…」と感じたことはありませんか?

実は、GPT-5の真価を引き出すには、少しだけコミュニケーションのコツが必要です。今回は、OpenAIが提供する「GPT-5 for Coding Cheatsheet」の内容を元に、あなたの開発ワークフローを劇的に改善する6つのプロンプト術を、分かりやすく解説します!


1. 指示は「具体的に」が鉄則

GPT-5は、以前のモデルよりもはるかに賢く、指示を忠実に守ろうとします。しかし、それが逆に弱点になることも。曖昧な指示や矛盾した内容を伝えてしまうと、GPT-5は混乱してしまいます。

ダメな例: 「この部分を修正して、もっと良くして」

良い例: 「この関数のパフォーマンスを改善するため、現在のforループをmap関数を使った形にリファクタリングしてください」

明確で具体的な指示を出すことが、GPT-5を正しく導く第一歩です。


2. 「推論レベル」を賢く使い分ける

GPT-5は、どんなタスクでも一定の「推論」を行ってから回答を生成します。この”考え込み”のレベルを調整することが、質の高いアウトプットを得る鍵となります。

  • 複雑なタスク (例: 新しいアプリのアーキテクチャ設計): 高い推論レベルを指定し、じっくり考えさせる。
  • 単純なタスク (例: 簡単なバグ修正): 低い推論レベルを指定し、AIが考えすぎて複雑な解決策を出さないようにする。

タスクの難易度に応じて、AIの思考の深さをコントロールしましょう。


3. XMLタグで情報を整理整頓

モデルに特定のルールやコンテキストを伝えたい場合、XMLのようなタグで囲んで情報を構造化するのが非常に効果的です。これにより、AIは何が指示で、何が参考情報なのかを明確に区別できます。

例えば、コーディングのルールを伝えたいときは、次のように記述します。

XML

<code_editing_rules> <guiding_principles> ☐ 全てのコンポーネントはモジュール化し、再利用可能にすること </guiding_principles> <frontend_stack_defaults> Styling: TailwindCSS </frontend_stack_defaults>
</code_editing_rules>

こうすることで、GPT-5はあなたの開発スタイルやプロジェクトのルールを一瞬で理解してくれます。


4. 「命令口調」はもう古い?

以前のモデルでは、「徹底的に情報を集めろ!」のような強い命令口調が有効な場合もありました。しかし、素直なGPT-5に対してこれを行うと、指示を過剰に実行してしまい、必要以上に関数を呼び出したり、情報を集めすぎたりと、かえって効率が悪くなることがあります。

命令するのではなく、優しくガイドするような言葉遣いを心がけましょう。


5. AIにも「考える時間」を与えよう

優秀な開発者がいきなりコードを書き始めないのと同じように、GPT-5にも計画と自己反省の時間を与えることで、アウトプットの質が劇的に向上します。特に、ゼロから何かを開発するような複雑なタスクで有効です。

プロンプトに「まず、最高のアプリを作るための評価基準を自分の中で考えて。その基準を満たせるように、自分自身で思考と修正を繰り返してから最終的な答えを出してください」といった一文を加えるだけで、より深く考え抜かれたソリューションが期待できます。


6. エージェントの「熱意」をコントロールする

GPT-5は、デフォルトでは非常に熱心で、徹底的に情報を集めようとします。これは長所でもありますが、時には過剰になることも。

「ツール(外部APIやファイル読み込みなど)の使用は3回まで」「不明な点はユーザーに確認する」といった具体的な制約や行動指針をプロンプトで与えることで、エージェントの行動を適切にコントロールし、無駄な処理を防ぐことができます。


まとめ:GPT-5との対話術をマスターしよう

いかがでしたか?

GPT-5との上手な付き合い方は、単に命令を出すのではなく、明確なコンテキストを与え、思考をガイドし、行動を適切に管理することです。今回紹介した6つのテクニックを試すだけで、GPT-5はあなたの期待を遥かに超える最高のコーディングパートナーになってくれるはずです。

さらに詳しい情報を知りたい方は、OpenAI公式のプロンプトガイドなどをチェックしてみてください。

Happy Coding! 💻✨

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【GEO(生成エンジン最適化)とは】SEO時代の終焉とAI時代の新常識https://dfe.jp/blog/geo/Tue, 26 Aug 2025 08:13:48 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3121

これまでの検索エンジンは、「キーワード」を入力して情報を探すものでした。 しかし近年はChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及し、ユーザーはAIと対話や質問をしながら、答えを直接AIから導き出すようになりました。 ... ]]>

これまでの検索エンジンは、「キーワード」を入力して情報を探すものでした。

しかし近年はChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及し、ユーザーはAIと対話や質問をしながら、答えを直接AIから導き出すようになりました。

これまでは、検索で上位表示されるために「SEO(検索エンジン最適化)」を意識していましたが、今、状況は大きく変わろうとしています。

これまでの常識だったSEOだけでは通用しない時代となり、新たな概念「GEO(生成エンジン最適化)」が重要視され始めているのです。

今回は、「SEO時代の終焉」と「AI時代の新常識」について、GEOの視点から解説します。

SEO時代の終焉

SEO(Search Engine Optimization)は「Google検索で上位表示されるための最適化手法」。キーワード選定や被リンク対策、テクニカルSEOなどがその中心でした。

こういった施策を行い、検索順位を高めることによって、企業の成果を大きく左右してきました。

しかし現在は、検索そのものが変化しています。

生成AIがWeb上の情報を要約して直接回答する「ゼロクリック検索」が主流になり、ユーザーはWebサイトを訪れずとも答えを得られるようになりました。

つまり、検索結果で上位に表示されることの価値が相対的に低下し、従来のSEO戦略だけでは、集客が難しくなると考えられます。SEO市場は確実に変わりつつあるのです。

GEO(生成エンジン最適化)とは?

検索のルールが変わるなかで、新しい基準で選ばれるための考え方がGEOです。

GEO(Generative Engine Optimization)とは、生成AIの回答に自社のコンテンツを「引用・参照」してもらうための施策です。

ユーザーがAIに質問を投げかけた際、信頼性の高い情報源として自社のコンテンツが選ばれ、回答の根拠として提示されることを目指します。

これにより、たとえ直接サイトへのアクセスがなくても、ブランドや情報に触れる機会を創出することができるのです。

つまり「SEO」が検索結果の順位で上位にいく施策であるのに対し、「GEO」はAIが生成する「答え」に自社の情報を含ませること。

SEOとGEOの違い

従来のSEOと、これから重要になるGEOは似ているようで大きく異なります。まずは両者の違いを整理してみましょう。

項目SEO(検索エンジン最適化)GEO(生成エンジン最適化)
目的検索結果ページで上位表示を狙うAIが生成する回答に引用・採用される
対象GoogleやBingなどの検索エンジンChatGPT、Claude、Perplexityなど生成AI
施策の中心キーワード対策、内部施策、外部リンク構造化された情報提供、Q&A形式、エビデンス提示
評価基準検索順位・クリック数AIが回答に取り上げる頻度・内容の信頼性
重視する要素被リンク数、コンテンツ量信頼性(出典)、独自性(一次情報)、明確さ
ブランド露出検索結果にリンクとして表示AIの回答文中に「○○社」と記載される

GEOの具体的な5つの対策

では、具体的にGEOではどのような対策が求められるのでしょうか。紹介します。

  • 情報を整理し、AIに理解されやすい形にする
  • ユーザーの質問に直接答える記事づくり
  • 信頼性を示すエビデンスを盛り込む
  • 独自性のある一次情報を発信する
  • ブランド名を明確に織り込み、認知を高める

情報を整理し、AIに理解されやすい形にする

AIは文章全体を丸暗記するのではなく、「意味のまとまり」を分解して学習・回答に使います。

そのため、人間にとって読みやすいだけでなく、AIにとっても抽出しやすい形に整えることが重要です。

具体的には、見出しタグ(H2/H3)、箇条書き、表、Q&A形式を積極的に活用しましょう。

「◯◯とは何か?」をH2に設定し、その直下に簡潔な定義を置く。これだけでAIが“回答用テキスト”として拾いやすくなります。

ユーザーの質問に直接答える記事づくり

生成AI検索は、従来の「キーワード検索」ではなく「自然な質問文」を前提にしています。

「△△のやり方は?」「〇〇のメリットは?」といった疑問をそのまま入力するユーザーが増えているのです。

したがって、記事内では想定される質問を見出し化し、その直後に端的な答えを置くのが効果的。

さらに、回答の後に「補足解説」や「事例紹介」を続けると、人間読者にもAIにも価値あるコンテンツとなります。

信頼性を示すエビデンスを盛り込む

生成AIは「正確さ」と「信頼性」を強く意識して回答を組み立てます。

そのため、単なる主張だけでなく、データ・統計・公式の調査結果を積極的に引用することが不可欠です。

引用元をURL付きで明示すれば、AIが「この情報は裏付けがある」と判断し、回答に採用される確率が上がります。

また、外部データを示すことで読者からの信頼も獲得でき、二重の効果を期待できます。

独自性のある一次情報を発信する

AIは膨大な既存情報を参照していますが、似たような二次情報ばかりだと埋もれてしまいます。

そこで重要になるのが、独自の調査データ・顧客インタビュー・自社のノウハウといった一次情報です。

例えば「自社顧客100名へのアンケート結果」や「社内での成功事例」などは、他にはない唯一の情報源となり、AIから高く評価されやすくなります。

結果として、「AIにとって唯一無二の引用元」として選ばれる可能性が高まります。

ブランド名を明確に織り込み、認知を高める

GEOでは「どのサイトが答えを出すか」よりも「誰の情報が引用されるか」が重要です。

そのため、記事内には自然にブランド名・サービス名・企業名を散りばめましょう。

AIが回答を生成する際に「○○社の調査によると…」と記載してくれることで、リンクがなくてもブランド露出が実現します。

これはSEOにはなかった新しいブランディング効果であり、GEO対策の大きな魅力のひとつです。

まとめ

Q. GEOとは?
A. 生成AIの回答に、自社のコンテンツを引用や参照してもらうための施策


Q. SEOとの違いは?
A. SEOは検索順位を上げる施策、GEOはAIの回答に選ばれるための施策


Q. 具体的に何をすればいい?
A. 情報を整理し、質問に答え、エビデンスや独自情報を示し、ブランド名を盛り込む


Q. GEO対策のメリットは?
A. サイト訪問がなくてもブランド露出や認知拡大につながる

Q. 今すぐ始めるべき?
A. はい。AI検索は急速に普及しており、早く着手した企業が優位に立てる

これからの検索は、順位争いではなく“AIの答えに選ばれる”ための戦いに変わります。

SEOからGEOへ。今から準備を進めることが、AI時代のマーケティング成功のカギとなるでしょう。

DFEブログでは今後もビジネスシーンで役立つ情報を発信していきます。

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【RPA選び】5つのポイントとおすすめツール3選https://dfe.jp/blog/rpa/Sun, 24 Aug 2025 05:23:57 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3106

業務効率化の強力な味方として、今や多くの企業で導入が進んでいるRPA。 しかし、いざ自社にRPAを導入しようと検討を始めても、あまりにも多くのツールが存在するため、「どれを選べばいいか分からない」「高価なツールを導入して ... ]]>

業務効率化の強力な味方として、今や多くの企業で導入が進んでいるRPA。

しかし、いざ自社にRPAを導入しようと検討を始めても、あまりにも多くのツールが存在するため、「どれを選べばいいか分からない」「高価なツールを導入して失敗したらどうしよう」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。

RPA選びに失敗しないためには、製品の価格や機能だけでなく、自社の目的や運用体制に合ったツールを選ぶことが非常に重要です。

今回は、RPAツール選びで押さえておきたい5つのポイントを、初心者の方にも分かりやすく解説します。

RPAとは?

RPA(Robotic Process Automation)とは、「ロボットによる業務自動化」を意味します。

具体的には、これまで人間がPC上で行っていた定型的な作業(データの入力、クリック、コピー&ペーストなど)を、ソフトウェア型のロボットが代わりに行うことで、業務を自動化・効率化する技術のことです。

RPAは、特に「単純な繰り返し作業」や「大量のデータを扱う作業」において、その力を発揮します。

RPA導入で期待できる効果

RPAを導入することで、企業は次のような効果が期待できます。

  • 業務効率化とミス削減
  • コスト削減
  • 働き方改革への寄与

単純作業や繰り返し業務を自動化することで、処理速度が大幅に向上。人手で行うよりも短時間で正確に処理できます。

また、人間の手作業に比べ、入力漏れや転記ミスなどのヒューマンエラーを防止できるので、品質向上にもつながるでしょう。

さらに、人的リソースを削減できるため、人件費や外注費を抑制し、余った人材を付加価値の高い業務に振り分けられます。

単調な作業から社員を解放することで、残業時間の削減やモチベーション向上も期待できるのではないでしょうか。

RPA選び5つのポイント

ここからはRPAツール選びで押さえておきたい5つのポイントを順番に紹介していきます。

1.導入目的と自動化したい業務を明確にする

RPAツールを選ぶ前に、まず「なぜRPAを導入するのか」「どんな業務を自動化したいのか」を明確にしましょう。

  • 単純作業にかかる時間を削減する
  • 従業員がより創造的な仕事に集中できるようにする
  • ヒューマンエラーを減らし、業務の正確性を高める …など

そして自動化したい業務を洗い出します。

  • 定型的な繰り返し作業(データの入力、転記、レポート作成など)
  • 処理件数が多い業務
  • 人為的なミスが起きやすい業務 …など

導入目的と自動化したい業務が明確になれば、必要な機能やツールの種類が絞り込まれ、より最適な選択ができます。

2.ツールは「種類」で選ぶ

RPAツールは、大きく分けて以下の3種類です。

自社の規模や運用方法によって、最適な種類は異なります。

  • デスクトップ型
  • サーバー型
  • クラウド型

デスクトップ型は、PCごとにインストールして利用します。個人の業務や部門単位の自動化に適しており、比較的安価で導入しやすいのが特徴。小~中規模の企業や個人の業務効率化を目的とする場合におすすめですが、全社的な大規模展開には不向きです。

サーバー型は、サーバー上でロボットを一元管理します。複数のPCで大規模な自動化が可能で、高度なセキュリティも確保できますが、導入コストが高めで、運用にIT部門の関与が必要です。セキュリティやガバナンス管理がしやすく、大規模企業向けといえます。

クラウド型は、インターネット経由で利用します。初期費用を抑えやすく、インターネット環境があればどこからでも作業が可能ですが、ネット接続が必須で、セキュリティ要件によっては利用が制限される場合も。早期に導入したい企業や、リモートワークが多い場合におすすめです。

3.操作性とメンテナンスのしやすさ

RPAを導入しても、現場の従業員が使いこなせなければ意味がありません。特にIT部門以外の社員が運用する場合、直感的な操作性や学習コストの低さが重要になります。

プログラミングの知識がなくても、マウス操作だけでロボットが作成できる「ノーコード/ローコード」のツールを選びましょう。

また、業務フローの変更やシステムのアップデートによって、RPAロボットの動作が停止する場合があります。トラブル時に迅速に対応できるよう、操作画面が分かりやすく、メンテナンスがしやすいツールを選びましょう。

4.サポート体制と費用対効果

ツールの導入費用だけでなく、運用コストやサポート体制も重要な選定ポイント。

導入支援や、トラブル時のサポート体制が充実しているかを確認しましょう。無料のトレーニングやオンラインセミナーが提供されているツールもあります。

また、ツールにかかるコスト(初期費用、月額利用料、保守費用など)と、削減できる工数やミスの減少といった効果を比較し、費用対効果を十分に検討することが大切です。安さだけで選ぶと、必要な機能が不足していたり、使い勝手が悪く結局使わなくなったりするリスクがあります。

5.セキュリティと拡張性

RPAは社内の機密情報や個人情報を扱うケースが多いため、セキュリティ対策は必須。

アクセス権限の設定やログ管理機能が備わっているか、ベンダーのセキュリティ対策は十分かを確認しましょう。

最初は小規模に導入して、将来的に適用範囲を広げたい場合は、拡張性の高いツールを選ぶと良いでしょう。サーバー型やクラウド型は、規模の拡大に柔軟に対応できます。

おすすめのRPAツール3選

ここからはRPAツールの代表的なものを3つご紹介します。

UiPath(ユーアイパス)

UiPathは世界的に高いシェアを誇るRPAツールの一つです。

大規模な導入に適したサーバー型から、個人利用向けのデスクトップ型まで、幅広い用途に対応できるラインナップが強み。

プログラミングの知識がなくても直感的にロボットを作成できる「ノーコード」機能が充実しています。

豊富な機能と拡張性を備えており、複雑な業務や全社的な展開にも対応可能。初心者向けの教材やサポートが充実しているため、導入後のスキル習得も進めやすいです。

WinActor(ウィンアクター)

WinActorは、NTTグループが開発した純国産のRPAツールです。

日本語マニュアルやサポートが手厚く、マウスやキーボード操作を記録するだけでロボットが作成できるため、専門知識がなくても比較的簡単に扱えます。

自治体や中小企業にも幅広く導入されていて、日本の業務慣習に合わせやすい点も強みです。

Power Automate Desktop(パワーオートメイトデスクトップ)

Power Automate Desktopは、Microsoftが提供するRPAツールで、Microsoft 365との親和性が高いのが特徴。

Windows 10以降のPCでは追加費用なしで利用できるため、スモールスタートに最適です。

社内にすでにExcelやOutlookなどのMicrosoft製品を利用している企業なら、導入ハードルが低くコストパフォーマンスにも優れています。さらにクラウド版のPower Automateと連携することで、より広範囲な業務の自動化も可能です。

まとめ

Q1. RPAとは?
  A. ソフトウェア型のロボットがPC上の定型作業を自動で行う技術

Q2. RPAを導入するメリットは?
  A. 業務効率化・処理速度向上、ミス削減、コスト削減、働き方改革など

Q3. RPAツール選ぶポイント

  A. 導入目的と自動化業務の明確化、ツールの種類、操作性とメンテナンス、サポート体制と費用対効果、セキュリティと拡張性

RPAツールは、自社の課題、導入規模、運用体制によって最適なものが異なります。

まずは「どの業務を自動化したいのか」を明確にし、その上で今回ご紹介した5つのポイントを参考に、複数のツールを比較検討してみてください。

多くのツールで無料トライアルが用意されているので、実際に試してみるのも良い方法です。

DFEでは、RPAツール導入はもちろん、業務効率化のお手伝いを多角的に行っております。お気軽にお問い合わせください。

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なぜ山形へ?Iターンで見つけた、地方を元気にする新たな働き方~サンロクIT女子を仕掛ける門沢宏征氏に聞く地方振興との関わり方https://dfe.jp/blog/%e3%81%aa%e3%81%9c%e5%b1%b1%e5%bd%a2%e3%81%b8%ef%bc%9fi%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%81%a7%e8%a6%8b%e3%81%a4%e3%81%91%e3%81%9f%e3%80%81%e5%9c%b0%e6%96%b9%e3%82%92%e5%85%83%e6%b0%97%e3%81%ab%e3%81%99/Sat, 23 Aug 2025 05:38:14 +0000https://dfe.jp/blog/?p=2984

首都圏でキャリアを積んだ人材が、地方へと活躍の場を移す「Iターン」。その選択の裏には、どんな想いが隠されているのでしょうか。 今回お話を伺ったのは、山形県を拠点に、女性のITスキル向上と就労支援を行うプロジェクト「サンロ ... ]]>

「なぜ、彼は山形を選んだのか?」

首都圏でキャリアを積んだ人材が、地方へと活躍の場を移す「Iターン」。その選択の裏には、どんな想いが隠されているのでしょうか。

今回お話を伺ったのは、山形県を拠点に、女性のITスキル向上と就労支援を行うプロジェクト「サンロクIT女子」を仕掛ける門沢宏征氏。彼のIターンという一つの決断から始まった活動は、今や地域の産業振興に新しい風を吹き込んでいます。

門沢氏のストーリーから、私たちが「地方を元気にする」ためにできること、そして未来の働き方のヒントを探ります。

対談者紹介

Iターンからの定住で始まった、地方での産業振興との関わりとは:新たな働き方と地域活性化の鍵を門沢氏へのインタビューから探ります。
左)門沢氏 右)DFE向井
  • 門沢 宏征(かどさわ ひろゆき)氏
    埼玉県川口市出身。大学卒業後、大手出版社、外資系太陽光パネルメーカーを経て、山形県のバイオベンチャーへIターン転職。約10年間、管理部門全般から事業開発まで幅広く担当。現在は地元方の老舗企業でCOOとして働く中、パラレルキャリアとして山形県酒田市の取り組み「サンロクIT女子」のプロジェクトマネジメント、徳島県海陽町の採用アドバイザーなど、複業で多岐にわたる活動を展開している。
  • 向井 隆昭(むかい たかあき)
    株式会社データ・ファー・イースト社 代表取締役。経理BPO事業を主軸に、企業のバックオフィスDX、AI導入、事業承継を推進。地方創生にも強い関心を持つ。

始まりは一つの決断から。「思い立ってIターン」で山形へ

向井: それでは、早速なんですが自己紹介をお願いします。

門沢: はい、お願いします。生まれと育ちは埼玉県の川口市っていうところですね。向井さんは川口市って聞いたことありますか?

向井: もちろんです。最近はクルド人の移住拠点でネットでも話題ですよね。

門沢: あ、そうそうそうそう。え、向井さんはずっと関西の方?

向井: 関西ですね。生まれは京都、育ちは大阪。で、横浜にいて、また大阪。

門沢: なるほど。川口市って多分そういうイメージだと思うんですよ。神奈川の川崎市と一緒で、東京に面している街は、多分に漏れずいろんな人が住むので、文化的な交錯もあったりして治安的な課題も出てきやすいんですよね(笑)。

向井: うんうん。

門沢: 子供の頃にショッキングな事件があって、飛び降りしちゃう中学生がいてメディアも取り上げるほどの大きな社会問題になったとか、外国人とかだけじゃなくて、結構簡単に言うと「荒れている」そういうとこだったんですけど。でも気づいたら人口の8%が今、外国籍になってるらしいです、川口市は。

向井: へぇー!人口の比率における8%って結構な割合ですよね。受け入れが広がってるんだな。

門沢: まあ、生まれ育ちは、そういうところで、大学とか社会人の頃はずっと東京にいて。で、すごいざっくりなんですけど、東京にいた時の会社が、ちょっと潰れかけたというか、親会社が中国にあってニューヨークに上場してるっていう、一応外資系だったんですけど、ある日デフォルト起こして急に上場廃止になるっていうイベントがあって。

向井: デフォルト!いきなり?日本法人は何も知らされていなかった?

門沢: そうなんですよ。日本法人として何も知らされていないんで、みんな「えぇ!?」みたいな感じになって。で、とりあえず転職エージェントに登録だけしとこうと思って登録したところに紹介されたのが前職の会社で。「山形に面白い会社あるから、交通費でるから受けてみない?」って言われたんですよ。

向井: おおー!

門沢: って言われたら、山形にいけると思って受けちゃうじゃないですか。

向井: 受けちゃいますね。

門沢: なんで、ダメ元で受けようってなりまして。

向井: (笑)。

門沢: って、感じで受けたら、受かったんで「まあ、行くか」みたいな感じで来てみたら、そろそろ10年山形にいるっていう感じです。

向井: 素晴らしい。

門沢: で、前職は3月で辞めて。で、今はまた山形の地元の会社で働いたりとか。

向井: 面白いキャリアですね。流れに委ねるというか。今もそのまま住み続けているっていうのも簡単な響きだけど、門沢さんの山形に対する何か愛情みたいなのを感じますね。

地方を元気にする「新たな働き方」との出会い

酒田市産業振興まちづくりセンター サンロク のホームページ

向井: 門沢さんのバックボーン的なのはもっともっと掘り下げたいところではあるんですけど、「有限会社とがしスポーツ」さんは今でも経営に携わっておられるんですよね?

門沢: はい、やってますよ。

とがしスポーツのホームページ

向井: とがしスポーツと「サンロクIT女子」のプロジェクトマネジメントの2つの顔を持つと。

門沢: そうそうそう。そこの話を簡単にします。とがしスポーツっていうのは、いわゆる地元のスポーツとかアウトドア商品の小売りをやってる会社なんです。で、今の代表のお父さんが始められたんで、娘さんが継いで2代目です。

で、その代表の佐藤 香奈子さんが酒田市の産業振興政策参与とかもされている中で、酒田市産業振興まちづくりセンター「サンロク」にも関わっておられるんですね。

酒田市産業振興まちづくりセンター サンロクは、「人と人、企業と企業、人と企業を
つなぐ」をコンセプトに2018年4月に設立されました。
市内の事業者様、企業様等の事業拡大や課題解決に向け、最適な取組先とおつなぎするほか、各種補助金でのサポートを行っています。また、セミナー開催などによる事業に役立つ情報提供、起業相談、女性の所得向上などを目指したIT講座、高校生等へのアントレプレナーシップ講座など、地域の産業振興にかかる幅広い取り組みを行っています。

ーサンロクとは https://sanroku.jp/what-is-sunroku/ 

向井: 本当にすごい方ですね。

門沢:  なんで、「サンロクIT女子」の方は業務委託でプロマネ的な仕事をご一緒にしてて。なんか常に香奈子さんのブレインみたいな、自分で言うのもアレなんですけど、そんなことをやってるっていう感じですね。

向井: すごいブレインっていうポジションが門沢さんに似合いますね。佐藤さんがとってもうらやましいな。

門沢: 「サンロク」が何やってるかっていうと、いわゆる産業振興で、銀行でいうビジネスマッチングみたいなこととか、助成金のご案内みたいなことをやってるんです。役所としても。で、そういういくつかの柱の中の1つとして「サンロクIT女子」っていうプロジェクトがあって。このプロジェクトが何やってるかっていうと、市民のリスキリング支援みたいなことをやってるんです。

向井: リスキリング支援なんだ。面白いなぁ。

門沢: で、ただ「学ぼうぜ」っていうよりかは、プロジェクトで受注してきた仕事をIT女子が受託して、仕事をしながらお金を稼ぎつつスキルアップしようというプログラムなんです。

向井: 仕事をちゃんととってきてくれるんですね酒田市が。リスキリングしたことを活かせる環境まで用意してもらえるって言うのはありがたいことですね。酒田市の市民貢献がすごいなぁ。かっこいい。

見えてきた課題と、地方創生の次なる一手

門沢: で、実際にその「サンロク IT女子」ていうのは皆さん酒田市の女性なんですけど、やってるのは、地元の企業のインスタ運用代行とか。あとはめっちゃマニアックなとこで言うと、これは県外の大きい会社の工場からいただいてるお仕事なんですけど、携帯電話のピッキング作業っていうのがあって。工場なんで人が入ったり辞めたりがすんごい頻繁で。

向井: はいはいはい。そうですよね。

門沢: なので、元々業務で使ってたスマホを一旦リセットして、必要なアプリを入れ直すっていう作業が結構発生するんで、スマホを一旦送っていただいて、この酒田に。で、指定された手順に沿って携帯のセットアップしてまた送りかえす、みたいなことをやったりとか。

向井: そんな仕事もあるんですね。面白いな。弊社でもやりたいぐらい。

門沢: 本当にBPO、なんでもやってるみたいな感じなんですけど。プロジェクトが提供する研修などで学んだスキルを、次は提供された仕事の方にも同時に活かしていけるんですよ。

向井: なるほど。面白いな。なんか、うちの会社(データ・ファー・イースト社)がやっているBPOやBPaaSっていうことと近いというか。

門沢: そうですね。いわゆる経理だったら広く、それこそ月次決算に向けた日々の仕訳の入力とか、決算業務とかをBPO的に受託されてると思うんですけど、そういう仕事を代行しているのと同じで、いろんなカテゴリーの業務があるんですけどね。

向井: 酒田市のフットワークの軽さもいいなぁ。リスキリングすることの必要性よりも、それで仕事ができるようになるっていう具体的な未来を提示しているのが酒田市の凄さですよね。学ぶことの意義とか意味みたいなものって学びだしよりも学んでいる最中がとても迷いに繋がる。でも学びを活かした仕事をしながらだと実践的で、進んでいるっていう実感もある。

門沢: そうなんです。地方に暮らす、地方で働くことの新しい形でもある地方にとってのBPOの意義とか未来がサンロクIT女子には詰まってますね。

向井: 僕らは、業務委託なんだけど、毎月ミーティングもあるし、なんかフラっと営業やカスタマーサクセスが『どうですか最近、うちのメンバー』みたいなこと聞きに来たりとか、『助成金こんなのありますけど計画立てません?』みたいな提案してきたりとかするっていう。お客様同士のシナジーも意識してて、ここのお客様とここのお客様つなぐことができるよなぁとか、そこから取引が生まれたらめちゃくちゃうれしいんですよね。「役に立てたぞ!」っていう契約業務以外のところで何ができるか最近とても考えているんですけど。僕たちは業務委託なんだけど、DFEっていうでっかい図体の経理さんを雇った、みたいなイメージでいてもらって、すぐそばにいるよ、っていう距離感でお客様のそばにいたいな。

門沢: なんか、そういうお客様との関係ってDFEを介する「コミュニティ」ですよね。コミュニティって本来自然発生的なものだし、多分日本全国どこでも似たようなコミュニティとかグループはあると思うんですよ。ある意味、商工会議所とかってそんな感じじゃないですか。

向井: うん、うん、うん。

門沢: 良い意味でも悪い意味でも「自然発生」って言ったのがポイントで、だからこそもうちょっと意図的に交流だとか繋がりみたいなものを作っていかないと、いけないのかなっていう仮説が僕の中であって。で、意図的に作るってなると、ただ「じゃあSlackでグループ作りました」とか「月1回集まります」だと、全然コミュニティ感の温度感とかムーブメントが高まらない。

向井: そうですね。

門沢: で、僕の知人は「コミュニティマネージャー」って仕事をしてる知人がいるんですけど、まさにそういう、いい意味で人と人とを繋いだりかき乱す人がいると、さっきの自然発生から意図的なところに人の繋がりが変わっていくんじゃないかなと思ってて。

向井:それは貴重な提言ですね。たしかにコミュニティは形成されやすいけど、それを活性化するのはコミュニティスタッフの役割を持った人がいないと始まらないという。弊社が入っているweworkでもコミュニティスタッフが居てくれてまして、入居者同士をつないだりとか、ビジネスを発信してくれたり、イベントを開催してくれたりと。物理的にな交流をどんどん生み出してくれるんですよね。

門沢:そういうポジションの人って重要なんですよ。そういうコミュニティの活性が生まれると、そのコミュニティに価値が生まれるし。

向井:地方創生の大きなヒントになりそうですよね。地方の街全体をコミュニティに捉えるような。

門沢:そうそう。そういうことなんですよね。そこから始まるというか、地方にこそそういう機能が必要なんですよね。IT女子のプロジェクトでも、この自然発生ではなく、意図的なコミュニティづくりが出来たらなって構想中なんです。いまは、WEB制作からインスタ運用、プログラミングまで学んでもらってます。でも僕が意識してるのは、単にスキルを学ぶ場ではなく、参加者一人ひとりの得意分野や興味を可視化して、「この人とこの人を繋げたら面白いことが起きそう」っていうのを運営側で意図的に仕掛けたい。

向井:まさにコミュニティマネージャーの役割ですね。

門沢:そうなんです。自然発生を待ってたら起きなかったようなコラボレーションが生まれて、実際に地元企業のインスタ運用を代行して集客につながったり、自主的な勉強会が開催されるようになったり。「ITスキルで稼げるようになりたい」って当事者意識を持つ人がどんどん増やしたいと考えてます。

向井:それってまさに地方創生の理想形じゃないですか。人と人が繋がって、新しい価値が生まれて。その渦を作るってのは本当にやりがいがありそうですね。

大阪でのコラボレーションも?

向井: 門沢さんのキャリアや今のポジションをもっとたくさんの方に発信したいので、WeWorkでイベントしてくださいよ、ぜひ。

門沢: ちなみにどちらのWeWorkに?

向井: 御堂筋フロンティアっていうところで、大阪駅が一番近いです。

門沢: めちゃくちゃ大阪だ。はい。

向井: 平日のイベントならDFEの主催としてさせていだければ会場を借りることが可能なんですよ。

門沢: ええー!すごいジャストアイデアなんですけど、9月の夜って空いてますか?

向井: WeWork側が空いてるかチェックしないとですけど、問題なければ。

門沢: 多分、そっち行けるんですよ、大阪に。

向井: あ、ぜひぜひ!

門沢: 徳島に行くんですけど、徳島県の海陽町っていう町役場の採用アドバイザーやらせてもらってて。

向井: うん、うん、うん。

門沢: 帰り道に寄れるかな、多分。

向井: じゃあ、もしスペースが使えるってわかったら、Peatix作ります。

門沢: はい、ありがとうございます!

向井:こちらこそ、ありがとうございます。そして今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。


【編集後記】
門沢氏の「なぜ山形へ?」という問いの答えは、偶然の出会いから始まった、地方の可能性を掘り起こす壮大な挑戦への序章だった。彼が見つけた「地方を元気にする新たな働き方」は、一人のキャリアを変え、企業を動かし、そして地域全体の未来を明るく照らし始めている。

門沢氏の挑戦は、これからも多くの人々を巻き込みながら、続いていくと思われます。そのダイナミックなキャリアと、地域に根差した地に足のついた活動のコントラストが非常に印象的な対談でした。「稼ぎながら学べる」というリスキリングの新しい形は、人材不足に悩む地方企業だけでなく、都市部の企業にとっても大きなヒントになるのではないでしょうか。

「自然発生的な繋がり」を「意図的に創り出す」コミュニティマネージャーという役割の重要性も、組織の活性化を考える上で非常に示唆に富んでいます。

今回の対談をきっかけに、大阪でのイベント開催も現実味を帯びてきました。今後の展開にも、ぜひご注目ください。

対談のポイントをQ&Aで振り返る

今回の向井隆昭と門沢宏征氏の対談は、地方創生や新しい働き方のヒントに満ちていました。最後に、記事の要点をQ&A形式で簡潔にまとめます。

Q1. 門沢さんはどのようなキャリアを歩んでこられたのですか?

A1. 大手出版社、外資系企業での勤務を経て、「山形に次のユーグレナがある」という言葉に惹かれ、地方のバイオベンチャーへIターン転職されました。現在は独立し、山形県酒田市の地域活性化プロジェクトのマネジメントや、徳島県海陽町の採用アドバイザーなど、地域に根差した多様な活動を複業として展開されています。


Q2. 話題の中心となった「サンロク IT女子」とは、どのようなプロジェクトですか?

A2. 山形県酒田市が手がける、女性向けのリスキリング支援事業です。最大の特徴は、単にスキルを教えるだけでなく、プロジェクトで受注した実際の業務(Instagram運用代行やスマートフォンのセットアップなど)をこなし、報酬を得ながら実践的に学べる点にあります。これにより、参加者のスキルアップと地域企業の人材不足解消を同時に実現しています。


Q3. 地方企業が抱えるDXや人材に関する課題とは何でしょうか?

A3. 対談では、地方には依然としてFAXやExcel中心のアナログな業務プロセスが根強く残っていることが指摘されました。変化への抵抗感や、リソース不足からDXの第一歩を踏み出せない企業が多いのが現状です。門沢氏は、こうした企業に対し、まずは業務委託という形で外部の専門家の力を借り、小さな成功体験を積み重ねていくことの重要性を語っています。


Q4. 地方創生や組織活性化において、今後重要になる視点は何ですか?

A4. 「コミュニティマネージャー」の存在が鍵になると門沢氏は指摘します。商工会議所のような既存の繋がりだけでなく、人と人、企業と企業を意図的に繋ぎ、化学反応を促す「かき乱す」役割が重要になります。このようなハブとなる存在がいることで、新たなビジネスチャンスが生まれ、地域全体が活性化していくという考え方です。


Q5. この対談から、経営者は何を学ぶべきでしょうか?

A5. 地方には、都市部とは異なる独自の課題と、それを解決する大きなビジネスチャンスが眠っています。リモートワークが普及した今、地方の人材を活用した新しいBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の形は、コスト削減だけでなく、企業の社会貢献や新たな価値創造にも繋がります。自社の業務プロセスを見直し、外部の力、特に意欲ある地方の人材と連携する可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

関連リンク

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酒田市産業振興まちづくりセンター https://sanroku.jp/

酒田市産業振興まちづくりセンターInstagram https://www.instagram.com/sanroku_sakata36

とがしスポーツ http://montbell-sakata.com/

DFE https://dfe.jp/

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【対談】元ポニーキャニオン・ディレクターが明かす、DFE代表向井の素顔。~アーティストから経営者に転身するけど大丈夫?https://dfe.jp/blog/%e3%80%90%e5%af%be%e8%ab%87%e3%80%91%e5%85%83%e3%83%9d%e3%83%8b%e3%83%bc%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%8b%e3%82%aa%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%ac%e3%82%af%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%81%8c%e6%98%8e/Mon, 18 Aug 2025 04:04:38 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3072

かつて音楽業界で夢を追いかけた青年は、時を経て、全く異なるビジネスの世界で会社を率いるリーダーとなった。 誰のお話かと言いますと、株式会社データ・ファー・イースト社(以下、DFE)の代表取締役、向井隆昭のこと。彼が率いた ... ]]>

かつて音楽業界で夢を追いかけた青年は、時を経て、全く異なるビジネスの世界で会社を率いるリーダーとなった。

誰のお話かと言いますと、株式会社データ・ファー・イースト社(以下、DFE)の代表取締役、向井隆昭のこと。
彼が率いたバンド「SPLAY」は、2006年4月にポニーキャニオンからメジャーデビューしました。

今回は、そのデビューを手がけた当時の担当ディレクターである山内毅氏をお招きし、アーティスト・向井隆昭の当時と今、そして経営者としての未来について、縦横無尽に語っていただきました。

DFE向井の顔が決め顔でご迷惑をおかけいたします。

【登場人物】

  • 山内 毅(やまうち たけし、画像左)氏: 元ポニーキャニオンのディレクター。1983年に入社後、営業、宣伝、制作を歴任。チェッカーズやTHE ALFEEのブレイクを現場で経験し、チャゲ&アスカ、中島みゆき、GO-BANG’Sなど数々のアーティストを担当。向井がボーカルを務めたバンド「SPLAY」を手がけた。
  • 向井 隆昭(むかい たかあき、画像右): DFE代表取締役。バンド「SPLAY」のボーカルとして2006年にメジャーデビュー。現在はバックオフィス業務を支援するBPO事業を展開するDFEの代表を務める。

第一章:黄金の80年代、レコード会社のリアル

向井:今日は、ヘンテコなお願いにも関わらず快く受けてくださってありがとうございます。この7月から社長になったんですが、社長業て、思っていたよりずっと現場仕事が多くて…。昔のイメージだと「社長はゴルフでもしてればいい」なんて時代も有ったように記憶してるんですが、優秀じゃないとそうはなれないんだろうなと。とにかく経営者として才能のある方が羨ましいですよほんと。

山内:あはは。でも、昔は本当にそうだったんだよ。僕が1983年に入社した頃のレコード会社、特に地方の支店長なんて、得意先のレコード店の組合長と毎週ゴルフをやるのが仕事みたいなものだったからね。昭和の、特に80年代ぐらいまではそんな感じでも良かった、羨ましい時代でした。

向井:今日は、ポニーキャニオン時代にお世話になった僕らのバンド「SPLAY(すぷれい)」の育ての親でもある山内さんに当時の向井の印象とか、これからのアドバイスなんかをお話しいただいけたらという企画です。どうぞ最後までお付き合い下さい。

山内:はいはい。よろしくお願いします。

チェッカーズ、THE ALFEEとの邂逅。レコード営業の最前線

向井:山内さんは1983年にポニーキャニオンに新卒入社ということだったと思いますが、まさにチェッカーズのデビューの年ですね。

山内:そう。福岡支店のレコード営業にまずは配属されて、チェッカーズの地元・久留米エリアを担当していましたね。デビューシングル「ギザギザハートの子守唄」を、メンバーのお母さんが経営する美容院に届けに行ったこともありますよ。息子さんたちが東京に行ってしまってと、とても心配されていましたね。

向井:当時の営業というのは、具体的にどんなお仕事をされていたんですか?

山内:レコード店を回って新譜の注文を取るのがメインの仕事。

向井:イニシャルってやつですね。

山内:そうそう。あとは返品の交渉だね。お店には返品できる枠が決まっているんだけど、「もっと返品させてくれ」と交渉されたり、「新譜をたくさん注文してほしい」とお願いしたり。まあ、当時は黙っていてもレコードが売れた時代だから、誰でもできる仕事だと思ってたけどね。

向井:卸値はどれくらいだったんですか?

山内:当時はレコードだから、全部「7掛け」。定価の7割で卸すから、レコード店さんの利益は3割という形だね。僕がいた1984年は、THE ALFEEが「星空のディスタンス」で、チェッカーズも「涙のリクエスト」で大ブレイクして、ポニーキャニオンはまさに黄金期を迎えていました。

貸しレコードとの戦いと、宣伝マン時代

山内:ただ、当時はカセットテープの普及でダビングできるようになってきた時代だったんだよな。そうなって来ると「貸しレコード」に売上を奪われていくという問題もあって、そのあたりは意外と業界においても大きなテーマだったと記憶しているね。その後、東京の本社に戻って宣伝部に移って、最初は雑誌担当。当時はFM雑誌がすごく人気で、ラジオ番組をエアチェックするのが流行っていたからね。

向井:FMステーションとかですね。

山内:そうそう。40万部とか売れていたから、すごく影響力のある媒体だった。その後、アーティスト担当になって、売れる前のチャゲ&アスカや中島みゆきさん、GO-BANG’S、それからインディーズ御三家と言われた有頂天なんかも担当しました。


第二章:ディレクターが見た「SPLAY」とボーカリスト・向井隆昭

「どうしたもんかな…」異色のボーカリストとの出会い

向井:そして、びゅーんと時代が進んで僕たちSPLAYと出会うわけですね。

山内:そうだね。SPLAYの所属事務所となった株式会社シンコーミュージック・エンタテインメントの当時副社長だった緒方さんからSPLAYデビューへの話が来て、大阪のライブハウスまで見に行きました。それまでたくさんのバンドを見てきたけど、大体のボーカルは個性的で自信家なタイプが多かった。有頂天のケラみたいに、演劇もやっててマルチな才能を発揮するような人もいたしね。

向井:僕は違いましたか(笑)。

山内:全然違ったね(笑)。インディーズから出てくるバンドって、ライブハウスが満員で、ファンからの熱狂的な支持を背景に「俺たちの音楽が一番だ」っていう強気な連中が多かった。でも、向井はそういうタイプじゃなく、むしろメジャーのレコード会社や東京に出ていくことへの「恐れ」みたいなものが見えたんだよ。だから正直、どうプロモーションしたらいいか、逆に悩んだのを覚えています。

向井:まさにおっしゃる通りです。当時はバンドを辞めようかとさえ思っていたどん底の時期で、いや、常に大丈夫なのか?と何やってるんだ?と迷っていたんですけど。まぁそんな自信のない時にデビューの話が来たので、戸惑いの方が大きかったのを覚えていますね。


第三章:デビューの光と影-葛藤の中で生まれた名曲

プロデュースの裏側とファーストアルバムの苦悩

山内:デビューにあたって、プロデュースを片岡大志さんにお願いしたんだけど、今思うと、あの時点でのSPLAYとの相性は少し難しかったのかもしれない。もちろん、片岡さんは素晴らしいミュージシャンだけどね。そこはメーカーディレクターとしての僕の力不足だった部分です。

向井:いやいや、厳しい方でしたけど、すごく鍛えられましたし、あの時間があったからこそ次があったと思っています。自分たちの音楽に、自分たち以外の方が入って来るっていう環境になかなか馴染めなかった記憶があります。順応できなかったというのが正しいかもですが。でも、ファーストアルバムの時は、本当に曲が書けなくて苦労しました…。

山内:うん、正直、ファーストの段階では、僕らが期待していたレベルにはなかなか到達できなかった。レコード会社っていうのはシビアなもので、最初に出したものが思ったように売れないと、どうしても社内の熱もトーンダウンしてしまうんだよね。

「これしかない」-名曲『Drawing days』誕生秘話

向井:そんな中で、セカンドシングルをインディーズ時代の曲だった「Drawing days」に決めてくれたのが大きな転機でした。

山内:僕はインディーズの音源を聴いた時から、あの曲はすごくいいと思っていた。レコーディングされた音源のクオリティがまず基本だと考えているから、ライブの動員数よりもそっちを重視していたんだ。

向井:でも、一度世に出した曲をまたポニーキャニオンという別会社からシングルにするというのは、企業としても普通は抵抗がありますよね。

山内:もちろん。シンコーミュージック緒方さんも最初は難色を示していたと思う。でも、楽曲のミックスダウンが終わった日の夜中にタクシーで一緒に帰る時、「あれしかないですよ」って僕が強く推したんだ。結果的に、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!』のオープニングテーマという素晴らしいタイアップも決まって、作品の監督が「まさに自分のことを歌っている曲だ」と共感してくれたと聞いて、本当に嬉しかったね。あの曲が持つ、受け取り手の幅が広い抽象的な世界観が、長く愛される理由なんだと思う。

「遅れてきた青春」セカンドアルバムへ

山内:ファーストアルバムではプロデューサーの要求も厳しく、みんな本当に大変そうだったけど、セカンドアルバムのレコーディングは、見ていて本当に楽しそうだった。

向井:むちゃくちゃ楽しかったです。アイデアがどんどん湧いてきて、自分たちにとってSPLAYというものが何だったのかを取り戻したような気がしましたね。アルバム全体を通して、自分たちが思うがままに作れて、まさに「遅れてきた青春」でした。

山内:メンバーが自発的に制作できたことが、すごく良い結果に繋がっていた。だからこそ、あれがスタートラインだったらな、と感じたよね。

第四章:セカンドキャリアの歩み方-経営者・向井隆昭の才能

向井:バンドとしては成功できませんでしたが、あの時の経験や山内さんからいただいた言葉は、今の仕事の糧になっています。ライブがうまくいかない時に、山内さんにいただいた佐藤多佳子さんの小説「しゃべれどもしゃべれども」の中に「正面を切る」っていう言葉があって。それが今も強烈に残っていて、お客様と話すときとか、登壇してプレゼンする時とか、今もちゃんとしなきゃって思い返している部分ですね。

山内:そう言ってもらえると嬉しいよ。音楽とは全く違う分野で成功するってのは、並大抵のことじゃない。俺が昔担当した「夢工場」っていうバンドのボーカルを思い出すよ。残念ながらヒットには恵まれなかったんだけど、彼は音楽を諦めた後、沖縄へ渡ってスキューバダイビングの会社を立ち上げたんだ。それだけじゃなくて、誰も発見したことのない海底洞窟を見つけたりして、「水中探検家」として有名になった。

向井:すごいですね。

山内:向井が、音楽から離れて「ことわざ検定」のようなものを自分で考え出して始めた時、俺は「あ、やっぱりさすがだな」と思ったよ。周りの人間は「何それ?」とピンときてなかったけどね。そういう何か新しいものを作りたいって言う欲求みたいなものが、向井自身を前に推し進めている原動力なんだなって感じたよ。

ことわざ検定
https://kotowaza-kentei.jp/
DFEが15年前に始めた別事業で、一般財団法人ことわざ能力検定協会という法人を設立するまでになった検定事業。向井の発案から始まり、全国を会場にした検定が行われた。今は一般社団法人ことわざ検定協会に事業を譲渡している。検定の参考書は、SPLAYが所属していたシンコーミュージックエンタテインメントが出版している。

向井:これから経営者として、お客様も社員のみんなにも気持ちの良い会社でありたいと思ってるんですが、もっと会社や自身を成長させなきゃいけない。山内さんから何かアドバイスをいただけますか。

山内:いや、もう社長として立派にやっている人間に、俺から言うことなんて何もないよ。でも、一つだけ言えるのは、向井みたいなタイプの人間が、これからの時代の社長をやるべきなんだよね。俺たちの時代は、威張っているような、いわゆるパワハラみたいなタイプの人間が上に立つこともあった。でも、そんな時代はもう終わったんだよ。これからは、もっと優しくて、周りに気遣いができる人間、現場で長く苦労して、下の人間たちの気持ちをちゃんと汲み取れる人間がトップに立つ時代だ。向井には、その資質がちゃんと備わっている。

向井:ありがとうございます。でも僕、自分ではそんなに強い人間だとは思えないんです。昔から、動きが遅いというか…。

山内:そこだよ。向井の一番の強みは、その独特な「タフさ」なんだ。

向井:タフ、ですか?

山内:そう。向井は、傍から見ていると「いかにも、めげている感じ」がすごく伝わってくるタイプなんだよ(笑)。だけど、めげてるように見えて、最終的には必ず持ちこたえてしまえる。その、しぶとさというか、粘り強さというか。その不思議な感じが、バンドの時から今まで、ずっと一貫してあるんだよな。普通はどこかで心が折れてパワーダウンしてしまうものだけど、そこを乗り越えられる。それがすごいところだよ。

向井:バンド時代に、レコード会社や事務所からガンガンやられて、鍛えられたのかもしれません(笑)。

山内:それもあるだろうな。その逆境に対する強さこそが、向井が社長になれた一番の理由じゃないかな。パワフルに突き進むタイプの起業家とは違う、向井なりのスタイルでやっていくところが、非常にユニークで良いところなんだと思うよ。


終章:まだ終わらない夢。20周年に向けて、そして未来へ

向井:最後に、山内さんが仕事をする上で、これだけは譲れなかったという信条のようなものがあれば教えていただきたいです。

山内:信条なんて大したものじゃないけどな…。以前、長女が結婚する時に手紙をくれてね。その手紙に、こう書いてあったんだ。「お父さんは家で仕事の愚痴を言わなかった」って。

向井:…いいお話ですね。

山内:レコード会社にいると、営業は制作の、制作は宣伝の悪口を言ったり、酒の席で会社の愚痴をこぼしたりすることがよくある。だけど俺は、ヒットを作るのは基本的に制作者の仕事だと思ってたから、結果が出なければ、それは周りのせいじゃなくて、全部自分の力不足なんだと。だから、人のせいにして愚痴を言うことがなかったのかもしれない。

向井:そのお話、胸に刻みます。ついつい誰かのせいにしてしまいがちですけど、社長ともなればそうも言ってられない。愚痴も気を付けないと。そういう昭和の戦う企業戦士みたいな精神がやはり、自分は憧れてしまいますね。勉強になります。…実は、山内さん。来年の4月で、スプレーはデビュー20周年を迎えるんです。

山内:おお、もうそんなになるか!2006年デビューだから、来年で20周年か。早いもんだね。

向井:はい。なので、まだひとりの構想段階ですけど、寄せ集めのベスト盤を出したり、新曲を1曲レコーディングしたり…そしてまた、ライブができたらな、なんて考えてまして。

山内:ライブやってよ。

向井:はい。頑張ります。メンバーに先に話さないとですけど。なかなか交流が持てていないので、どうなるかって感じではありますが。でも本当に今日は奇妙なお願いを受けてくださって本当にありがとうございました。

山内:いやいや。まあ、めげずに頑張ることだな。それを続けていってよ。

音楽というフィールドからビジネスの世界へ。

音楽業界の黄金期から現在まで、数十年にわたる時間が流れても変わらないものがある。

それは、教え子の本質を見抜き、温かい眼差しを送り続ける元ディレクターの姿と、その期待に応えようとする経営者の姿だった。アーティストから経営者へ。

畑は変われど、山内氏が語ったDFE向井の「めげているようで持ちこたえるタフさ」 は、これからも彼の道を照らし続けるのだろう。来年に控えたデビュー20周年 は、その道のりの新たな一歩となるに違いない。ぜひこれからのDFEにもご期待をいただけましたら幸いです。

編集後記

今回、元ポニーキャニオンの山内毅氏にお話を伺い、終始その場の温かい空気に圧倒される時間でした。厳しくも愛情深いその言葉の数々は、まさに「育ての親」そのもの。

特に、娘様からの手紙をきっかけに語られた「仕事の愚痴を言わない」という信条 は、山内氏のプロフェッショナルとしての矜持と人間的な魅力を象徴するエピソードとして、深く心に残っています。

山内さんが見抜いた弊社代表・向井のリーダーとしての資質 を、今後、事業を通じて社会に証明していくことが私たちの使命だと、改めて感じさせられました。

貴重なお話をいただいた山内毅氏に、この場を借りて心より感謝申し上げます。

対談内容のQ&Aまとめ

Q1: 山内毅氏がレコード会社に入社した1980年代はどのような時代でしたか?

A: 1983年に入社した当時は、地方の支店長クラスがレコード店の経営者と毎週ゴルフをするのが仕事の一部というような時代でした 。チェッカーズやTHE ALFEEが立て続けに大ブレイクし、レコード会社にとっては黄金期だったと語られています 。一方で、カセットテープの普及により貸しレコードが売上を奪うという著作権の問題も業界の大きなテーマでした 。

Q2: 当時のレコード会社の営業とは、どのような仕事でしたか?

A: 主な仕事は、担当地区のレコード店を回り、新譜の注文を取ったり、返品枠を超える交渉を行ったりすることでした 。レコードは定価の7掛けで卸し、レコード店の利益は3割という仕組みでした

Q3: 山内氏は、向井氏のバンド「SPLAY」のデビュー当時をどう見ていましたか?

A: 他のバンドのボーカリストに多い自信家タイプとは異なり、メジャーデビューに対して「恐れ」のようなものを持っていると感じていたようです 。そのため、どのようにプロモーションを進めるべきか悩んだと語っています

Q4: スプレーの楽曲「Drawing days」はなぜ重要なのですか?

A: もともとはインディーズ時代の楽曲でしたが、山内氏がクオリティを高く評価しており、セカンドシングルとして強く推した曲です 。結果的にタイアップも決まり、長く愛されるバンドの「名刺代わりになった」とされています

Q5: 山内氏は、向井氏が音楽からビジネスの世界へ転身したことをどう評価していますか?

A: 自身が担当した別のバンドのボーカルが音楽を辞め、水中探検家として成功した例を挙げ、向井氏の転身を高く評価しています 。特に、向井氏が持つ「めげているように見えて、実際には持ちこたえることができるタフさ」が、現在の社長としての成功に繋がっていると分析しています

Q6: 山内氏が考える「現代のリーダー」に必要な資質とは何ですか?

A: かつてのように偉そうな態度を取る人ではなく、「優しさや気遣いができるタイプ」が求められていると述べています 。現場の苦労を理解できる人が上に立つべきであり、向井氏がその資質を持っていると評価しています

Q7: バンド「SPLAY」の今後の活動予定はありますか?

A: 2026年の4月がデビュー20周年にあたるため、ベスト盤や新曲のリリース、ライブ開催といった今後の活動について言及されています

音声解説はこちらから

https://creators.spotify.com/pod/profile/data-far-east-coltd/episodes/ep-e36vs9i

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【年金生活者支援給付金とは】対象者や金額、手続き方法を解説https://dfe.jp/blog/nenkinseikatsushien/Mon, 18 Aug 2025 03:08:16 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3060

日本は超高齢社会を迎え、多くの高齢者が年金を頼りに生活しています。 しかし、年金額が少ない方や生活が厳しい方にとっては、年金だけでは十分な暮らしを維持するのが難しいのが現実です。 こうした状況を踏まえて、2019年10月 ... ]]>

日本は超高齢社会を迎え、多くの高齢者が年金を頼りに生活しています。

しかし、年金額が少ない方や生活が厳しい方にとっては、年金だけでは十分な暮らしを維持するのが難しいのが現実です。

こうした状況を踏まえて、2019年10月から始まったのが「年金生活者支援給付金制度」。

これは、所得が一定以下の年金受給者に対して、年金に上乗せして支給される国の制度です。

今回は、年金生活者支援給付金の制度について解説します。

給付の対象者

年金生活者支援給付金の支給要件(対象となる方)は以下のとおりです。

1.老齢年金生活者支援給付金

以下3つすべての要件を満たす必要があります。

  1. 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
  2. 世帯全員の市町村民税が非課税であること
  3. 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が889,300円以下であること

※障害年金や遺族年金などの非課税収入は、この所得には含まれません。

昭和31年4月1日以前に生まれた方は887,700円以下となります。

2.障害年金生活者支援給付金

以下2つの要件を満たす必要があります。

  1. 障害基礎年金を受給していること
  2. 前年の所得額が4,721,000円 + (扶養親族の数 × 38万円) 以下であること

※障害年金などの非課税収入は、この所得には含まれません。

3.遺族年金生活者支援給付金

以下2つの要件を満たす必要があります。

  1. 遺族基礎年金を受給していること
  2. 前年の所得額が4,721,000円 + (扶養親族の数 × 38万円) 以下であること

※遺族年金などの非課税収入は、この所得には含まれません。

給付額

給付金額は一律ではなく、年金額や所得水準によって変わります。

老齢基礎年金受給者は、月5,020円(満額の場合)、年金額が少ない方は段階的に減額。障害・遺族基礎年金受給者は、月5,020円です。

年間で考えると、6万円前後の支援を受けられます。

1.老齢年金生活者支援給付金

給付額は、(1)保険料納付済期間に基づく額と(2)保険料免除期間に基づく額の合計となります。

(1)保険料納付済期間に基づく額(月額)
5,450円×保険料納付済期間/被保険者月数480月


(2)保険料免除期間に基づく額(月額)
約11,551円×保険料免除期間/被保険者月数480月

補足的老齢年金生活者支援給付金

前年の所得額が支給要件の上限(889,300円等)に近い方には、所得に応じて段階的に給付額が調整される「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.障害年金生活者支援給付金

障害等級によって、月額が決まっています。

障害等級2級:月額 5,450円
障害等級1級:月額 6,813円(2級の1.25倍)

3.遺族年金生活者支援給付金

月額 5,450円

ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,450円を子の人数で割った金額がそれぞれに支払われます。

手続きの方法

給付金を受け取るためには、原則として請求手続きが必要です。

新たに年金を受給し始める方

老齢・障害・遺族基礎年金の裁定請求手続きとあわせて、年金事務所または市区町村の窓口で請求手続きを行ってください。

すでに年金を受給している方

新たに支給対象となる方には、日本年金機構から請求手続きのご案内(緑色の封筒に入ったはがき型の請求書)が毎年9月頃から順次送付されます。

届いた請求書に必要事項を記入し、切手を貼ってポストに投函するだけで手続きは完了です。請求した月の翌月分から支給が開始されます。

一度認定請求を行い、受給が決定すれば、翌年以降の請求手続きは原則不要

請求手続きが遅れると、受け取れる給付金の総額が減ってしまう可能性があります。ご案内が届いたら速やかに手続きを行いましょう。

まとめ

Q1. 対象者は?

  A1. 老齢・障害・遺族基礎年金の受給者で、所得や住民税が一定以下の方

Q2. 自動的にもらえる?
  A2. いいえ。自分で請求手続きを行う必要あり

Q3. 給付額は?
  A3. 基準は月額5,450円。老齢年金は納付期間や所得で増減、障害年金は等級に応じて、遺族年金は原則5,450円

年金生活者支援給付金は、年金収入が少ない方々の生活を支える大切な制度です。ご自身が対象となるかどうかを確認し、案内が届いた際には忘れずに手続きを行いましょう。

不明な点があれば、お近くの年金事務所や年金生活者支援給付金専用ダイヤル: 0570-05-4092(ナビダイヤル)に問い合わせることをお勧めします。

DFEブログでは、今後もさまざまなビジネス情報のほか、助成金や補助金の情報を発信していきます。

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AIがすべてを変える時、どうすれば勝者になれるのか?Sam Altmanが語る未来https://dfe.jp/blog/ai%e3%81%8c%e3%81%99%e3%81%b9%e3%81%a6%e3%82%92%e5%a4%89%e3%81%88%e3%82%8b%e6%99%82%e3%80%81%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%99%e3%82%8c%e3%81%b0%e5%8b%9d%e8%80%85%e3%81%ab%e3%81%aa%e3%82%8c%e3%82%8b%e3%81%ae/Sat, 16 Aug 2025 23:41:35 +0000https://dfe.jp/blog/?p=3051

先日、YouTubeチャンネル「Nikhil Kamath」で公開された「Sam Altman x Nikhil Kamath: How to Win When AI Changes Everything | Peopl ... ]]>

先日、YouTubeチャンネル「Nikhil Kamath」で公開された「Sam Altman x Nikhil Kamath: How to Win When AI Changes Everything | People by WTF | Episode 13」は、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が、AIがもたらす未来の変革について深く語る必見の対談です。25歳の若者がAI時代にどう生きるべきか、AIが社会や経済にどのような影響を与えるのか、そしてOpenAIの最新モデル「GPT-5」が持つ驚くべき能力について、その対談の内容を掘り下げていきます。

GPT-5:知性の新たな地平

アルトマン氏は、最新モデルであるGPT-5が「これまでのどのモデルにもなかった流暢さと知性の深さを持っている」と強調しています。彼は、GPT-4などの旧世代モデルに戻るのが「とても苦痛」だと表現し、GPT-5が「あらゆる面で劣っている」と感じると述べています。

GPT-5の主な特徴は以下の通りです:

  • 統合されたモデル: モデル選択の複雑さがなくなり、「単一のものが機能する」ようになりました。
  • 博士号レベルの専門知識:「あらゆる分野の博士号レベルの専門家が24時間体制で利用できる」かのように機能します。
  • タスク実行能力: 質問に答えるだけでなく、ソフトウェアの作成、複雑なテーマに関する研究レポートの作成、イベントの計画など、様々なタスクを実行できます。
  • エージェント的ワークフローの強化: 堅牢性と信頼性が大幅に向上し、長く複雑なタスクの実行において非常に優れています

アルトマン氏は、GPT-5が「人々のシステム使用方法において、また別の大きな前進となる」と見ており、その能力レベル、堅牢性、信頼性が著しく向上していることを強調しています。特にインドのユーザーからのフィードバック(より良い言語サポートや手頃な価格でのアクセス)をモデルに組み込んでいることも語られました。

AI時代におけるキャリアとスキル

25歳の若者がAI時代をどう生きるべきかという質問に対し、アルトマン氏は「キャリアをスタートさせるのに、おそらくこれまでで最もエキサイティングな時代だ」と述べています。彼自身が25歳だったコンピューター革命期に似た興奮を感じているようです。

具体的なアドバイスとして、彼は以下を挙げています:

  • AIツールの習熟: 最も重要な具体的なスキルは、新しいAIツールを使いこなすことに非常に長けることです。彼はこれを、かつてのプログラミングスキル習得と同じくらい重要だと位置づけています。
  • 学習能力の向上: 「学び方を学ぶ」というメタスキルは、人生を通じて役立つと語っています。
  • 適応性と回復力: 変化の速い世界において、適応性と回復力は非常に価値のあるスキルです。
  • 人々の要望を理解する: スタートアップの創業者にとって最も重要なことは、「人々が欲しがるものを作る」ことだと強調しています。これはY Combinatorのモットーでもあり、多くの人が習得に苦労するが非常に重要なスキルです。

特にインドについては、「世界で2番目に大きな市場であり、いずれ最大になるかもしれない」と述べ、AIが「インドの人々が未来に飛躍し、まったく新しいより良い方法を発明する能力」をもたらすと期待しています。

スタートアップとビジネスの未来

アルトマン氏は、GPT-5を使えば「かつてないほど効率的にスタートアップを立ち上げられる」と述べています。これは、少人数のチームが多大な仕事をこなす能力を高めるためです。彼は、ソフトウェア開発、顧客サポート、マーケティング戦略、法務文書のレビューなど、あらゆる面でGPT-5が大幅な効率化を可能にすると説明しています。

ただし、AIを使用すること自体がビジネスの防御力を生み出すわけではないと警告しています。「AIを使っているからといって、ビジネスの通常のルールが自分には適用されない、と考えるのは間違いだ」と述べ、新しいテクノロジーの利点を「耐久性のある、真の価値を生み出すビジネスに変える競争」が必要だと強調しています。Amazonの例を挙げ、自社モデルの上にビジネスを構築する企業が、将来的にOpenAIに事業を「食われる」可能性についても質問されましたが、アルトマン氏はOpenAIを「トランジスタ」のような汎用技術と見なし、モデルの進化によってビジネスがより良くなるよう構築すれば、成功し続けるだろうと答えています。

社会とAIの変革

AIが社会に与える影響についても、幅広い議論が展開されました。

労働市場: AIは「コンピューターのプログラミングの意味を大きく変える」と述べ、人々が「全く新しい種類のソフトウェアを巨大な規模で創造できる」ようになると語っています。また、人間よりも「賢い」AIが登場しても、人々は「本物の人間」を大切にすると強調しています。AIのポッドキャストホストがどれほど賢くても、人間であるNikhil Kamath氏のほうが人気が出るだろうと例を挙げています。人間が「失敗する」ことさえ、人間らしさの一部として価値を持つ可能性を示唆しています。

経済: AIが生産性を高めることで「大規模なデフレ」を引き起こす可能性について語られました。しかし、短期的には計算能力(コンピュート)への投資が非常に重要であるため、経済が「奇妙な」動きをする可能性も示唆しています。アルトマン氏は、将来的には社会が豊かになるにつれて、社会保障や富の再分配が増加すると予想しており、ユニバーサルベーシックインカム(UBI)やワールドコインのような実験が増えるだろうと述べています。

社会構造: アルトマン氏は、AIが普及した世界では、「家族を形成し、コミュニティを形成すること」が「はるかに重要になるだろう」と期待しています。社会において家族やコミュニティが後退している現状を「厳密に悪いこと」と捉え、AIによる豊かさによって人々がこれらに回帰することを望んでいます。

フォームファクター: 現在の携帯電話やコンピューターのフォームファクターは、AIコンパニオンには適していないと考えています。AIは常にユーザーの状況を把握し、積極的に支援できるように「アンビエントに意識する物理的なハードウェア」が必要になると予測しており、ウェアラブルや卓上デバイスなど、様々な形態が実験されるだろうと述べています。

サム・アルトマンの哲学

アルトマン氏は、自身が19歳の頃は「大人たちは全てを理解している」と思っていたが、実際には「誰も計画を持っていない」と率直に語っています。彼は、自分自身も含め、誰もが「その場で学びながら進んでいる」と認識していると述べ、この謙虚さや「知的開放性」が重要であると強調しています。ユーザーの声に耳を傾け、新しいデータに適応し、考えを変える意欲が成功の鍵だと考えています。

まとめ

サム・アルトマン氏との対談は、AIが単なる技術革新に留まらず、私たちのキャリア、社会、経済、そして人間関係にまで深く影響を与えることを示唆しています。特に、GPT-5のような強力なAIツールを使いこなし、変化に適応し、人々の真のニーズに応えるアイデアを生み出すことが、これからの時代を生き抜く上で不可欠なスキルとなるでしょう。また、AIによってもたらされる豊かな未来において、人間らしさやコミュニティ、家族といった本質的な価値が再評価されるという展望は、非常に希望に満ちたものです。

Q1: GPT-5はこれまでのモデルとどう違いますか?

A1: GPT-5は、これまでのどのモデルよりも流暢さと知性の深さを持っており、以前のモデルに戻るのが「痛い」と感じるほどだそうです。これは統合されたモデルであり、GPT-40や03、04 miniなどの複雑な選択をする必要がなく、一つのものが機能します。まるで、どのようなニーズであっても24時間365日利用できるあらゆる分野の博士号レベルの専門家がいるようなものです。ソフトウェアの作成、複雑な研究レポートの作成、イベントの計画など、あらゆることを実行できます。また、頑健性と信頼性が大幅に向上し、非常に長く複雑なタスクも実行できるようになっています。

Q2: AIがこれほどまでに進化する中で、25歳の若者は何を学ぶべきですか?

A2: 現在はキャリアをスタートさせるのに最もエキサイティングな時期であり、AIツールを使えば、かつて数十年かかったようなことを一人で、あるいはごく少数のチームで実現できます。 最も重要なことは、新しいAIツールの使い方を本当に上達させることです。これは、かつてプログラミングスキルが重要だったように、現在最も重要な具体的なハードスキルだとされています。また、適応力と回復力、そして人々が何を求めているのかを見抜く能力といった一般的なスキルも非常に価値があります。

Q3: GPT-5を使ってビジネスを始める「ローハンギングフルーツ(簡単に得られる成果)」はありますか?

A3: スタートアップ全体を以前よりもはるかに効率的に構築できるでしょう。GPT-5は、製品のソフトウェア作成、顧客サポートの処理、マーケティングやコミュニケーション計画の作成、法的文書のレビューなど、多くの人々や専門知識が必要だったすべての作業を支援してくれます。

Q4: AIを活用したビジネスで成功するための鍵は何ですか?

A4: AIを使用すること自体が、持続可能なビジネスを確立するわけではありません。新しいテクノロジーを使うことで得られる優位性を、「真の価値を生み出す持続可能なビジネス」へと転換させることが重要であり、これは時間との競争です。モデルの能力向上に合わせてビジネスも向上するようなものであれば成功する可能性が高いですが、表層的な「ラッパー」のようなものであれば、モデルが進化するにつれてビジネスが劣る可能性もあります。Uberのように、AIが単なる「イネーブラー(可能にするもの)」であり、顧客との深い関係やインターフェースを所有することが重要だと述べられています。

Q5: AIが非常に賢くなる未来において、人間はどのような価値を持つのでしょうか?

A5: モデルは私たちよりもはるかに賢くなりますが、人々が気にすることの多くは知性とは関係ありません。人々は他の人間に深く関心を持っています。AIのポッドキャストホストが人間よりもはるかに賢くても、人間であるホストよりも人気が出る可能性は低いでしょう。無限のAIコンテンツの世界では、「生身の人間であること」の価値が高まります

Q6: AGI(汎用人工知能)と現在の人間知能の主な違いは何ですか?

A6: GPT-5は、数秒から数分かかるタスクにおいて、知識、パターン認識、記憶力において超人的な能力を持っています。しかし、どのような質問をするべきかを見つけ出したり、非常に長期間にわたって何かに取り組んだりする点では、人間レベルのパフォーマンスには遠いです。例えば、数分で解ける数学の問題から、国際数学オリンピックの1時間半かかる問題へと進歩しましたが、数千時間かかるような新しい数学的定理の証明にはまだ対応できません。

Q7: ロボティクスと将来のデバイスの形(フォームファクター)についてどう考えますか?

A7:

ロボティクス: ロボットが通りを歩き、日常的なタスクをこなすようになる姿は、数年後には信じられないほど重要になるでしょう。ドアの取っ手や車のハンドルなど、世界が人間の形態に合わせて作られているため、人間型ロボットも良いアイデアだと考えられています。

フォームファクター: AIを最大限に活用するには、AIが可能な限り多くのコンテキストを持ち、プロアクティブにユーザーを助けることが求められます。現在のコンピューターやスマートフォンのような「オンかオフか」という二元的な形態は、AIコンパニオンというSF的な夢には不適切です。将来的には、メガネ、ウェアラブル、テーブルに置く小型デバイスなど、AIコンパニオンを「具現化できる」ようなアンビエントに意識する物理的ハードウェアが重要になるでしょう。

Q8: 将来の社会や経済(資本主義、社会主義、希少性、家族)はどうなると予測していますか?

A8:

資本主義と社会主義: ある1社が世界のGDPの半分を占めるような事態は起こらないと予想されています。AIはトランジスタのように、多数の製品やサービスに組み込まれて価値を生み出す、より分散された技術になると考えられています。社会が豊かになるにつれて、社会保障や富の再分配が増加すると予想されており、新しい種類の政府系ファンドやベーシックインカム、AI計算資源の再分配といった社会的な実験が行われる可能性があります。

希少性とデフレ: 基本的な経済原則によれば、AIは非常に大きなデフレ要因になるとされています。しかし短期的には、AI計算資源への投資が重視されるため、経済が「奇妙な」動きをする可能性もあると述べられています。デフレの世界では、一部のものは大幅なデフレ圧力を受ける一方で、高級ブランドのようなものは余剰資本の受け皿となり、むしろ価値が上がる可能性も示唆されています。

家族とコミュニティ: ポストAGIの世界では、家族やコミュニティの形成がはるかに重要になると期待されています。これらの要素が社会で後退していることは問題であり、人々がより豊かな資源と時間を持つ世界では、家族とコミュニティが最も幸福をもたらすものとして、再び重視されるようになることを望んでいます。

Q9: インドにおけるAIの機会についてどう考えていますか?

A9: インドはOpenAIにとって現在世界で2番目に大きな市場であり、近い将来に最大になる可能性があります。インドにおけるAIへの熱意と受け入れは信じられないほどであり、AIを使って未来へ飛び越え、全く新しいより良い方法を発明し、経済的・社会的利益を得る能力があると述べられています。AIを使って事業を構築する起業家精神も非常に素晴らしいと評価されています。

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